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注水量が増えると臨界する仕組み。

2012/11/28(Wed) 07:54

3号機の注水量 一時上限超えに NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121126/k10013758091000.html

11月26日 16時12分


26日午前、東京電力福島第一原子力発電所3号機で、原子炉への注水量が臨界を防ぐために上限を設けている増加幅を一時的に超えるトラブルがありました。

東京電力によりますと、注水量はすぐに元に戻り、臨界も起きていないということで、原因を調べています。

福島第一原発の原子炉の冷却については、核分裂反応が連続して起きる臨界になることなどを防ぐため、注水量が急激に増えないよう、1時間当たりの増加幅を最大で1トン以下に抑えるよう保安規定で定めています。

ところが、26日午前11時の時点で、3号機の注水量の増加幅が1時間当たり1.2トンに達し、東京電力は保安規定を逸脱したとして国に報告しました。

東京電力によりますと、注水量はすぐに調整して元の量に戻り、臨界を監視するための格納容器の放射性物質の濃度にも変化がないことから、再臨界は起きていないということで、原因を調べています。

原子炉への注水を巡っては、ことし8月、1号機から3号機への注水量が保安規定で定めた必要な量を一時的に下回るトラブルも起きていて、原発の冷却という重要な設備の相次ぐトラブルに管理の在り方が問われています。

--転載ここまで--


3号機の注水量の増加幅が保安規定に逸脱したとして東電が国に報告したことを伝える記事であるが、一瞬、はて?と疑問符が浮かぶことだろう。確かに、一時間で1.2トンも注入量が増加したということだが、3号機では毎時5.8㎥(=トン)を注水している。そもそも、現時点での炉心冷却に5.8㎥(=トン)注水しているのだから、それが1.2増えて7.0になったところで大騒ぎするほどのことでもなくないか?と、素人考えでは思ってしまう。

さらにいえば、原子炉建屋地下階を沈めている滞留水は0.5兆Bq/リットルというとてつもなく高濃度に放射能汚染されている。0.5兆Bq/リットルの高濃度汚染滞留水を薄めるために注水量を上げたのではないかと勘ぐってしまう。ちなみに、記事中、『臨界を監視するための格納容器の放射性物質の濃度』とあるが、原子炉格納容器ガス管理システムが監視するキセノン135の濃度のことである。高濃度汚染滞留水を薄めた可能性について否定するものではない。


www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_121127_03-j.pdf
のはましとのはまとはり はしは


保安規定では、『1時間当たりの増加幅を最大で1トン以下に抑える』取り決めになっている。理由は、急激に注水量を増やすと臨界が起きてしまうからということである。1)なぜ、急激に注水量を増やすと臨界が起きてしまうのか。2)注水増加=臨界のメカニズムはどのようになっているのか。少なくとも、この二点について十分に説明されていないふうに思う。

簡単なことをまず説明しておく。ウランの同位体であるウラン235は一定量を一箇所に集めると臨界する。密度や形状、周囲の環境によっても左右されるが、ウラン235(100%純度)が臨界する量は、液体状態で0.8キログラム(800グラム)、金属状態で22.8キログラムである。

臨界質量は計算上の値であって理論値である。周囲の反射材や衝撃などの条件が重なれば、未臨界量であっても臨界する。

まずは、1999年発生した東海村JCO臨界事故を引いてみたい。


よくわかる原子力 - 東海村JCO 臨界事故
http://www.nuketext.org/jco.html

決死の終息作業
10月1日、午前1 時40分第一回の現地対策本部会議が開かれ、沈殿槽の回りの冷却水の抜き取りが試みられました。きわめて過剰な放射線を浴びながら写真撮影班2名と16人が決死の作業をした結果、核反応は、午前6時15分頃終息しました。その後、中性子の吸収材(ホウ酸)が注入されて臨界に関しては危険性はなくなりました。

---------------------抜粋


img_327613_5086454_1.jpg


通称、バケツ臨界事故。この事故は、濃度18.8%の硝酸ウラニルを16キログラム混ぜ合わせるという正気の沙汰ではない荒行に加え、沈殿槽の周囲に張り巡らされていた冷却水が反射材となり臨界事故を招いた。事実、沈殿槽の冷却水を抜き取ると臨界は止まった。この時の作業は、茨城にある増殖炉、常陽に用いられる核燃料用のウラン濃縮だったとも言われているが、当方は日本国産の核兵器用ではなかったかと疑っている。それはさておき、ここでは、冷却材である水が、実は反射材として臨界を引き起こしかねないということだけ頭に入れておきたい。


次に、今年夏に就任した米原子力規制委員会のアリソン・マクファーレン委員長がなんと言っていたか、を示しておきたい。


米原発の使用済み核燃料「できる限り空冷式に」 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120815-OYT1T00959.htm リンク切れ

【ワシントン=中島達雄】7月に就任した米原子力規制委員会(NRC)のアリソン・マクファーレン委員長が14日、初めて記者会見した。

国内104基の原子力発電所でプールに一時貯蔵している使用済み核燃料について、できる限り「ドライキャスク(空冷式の金属容器)」に変える考えを明らかにした。また、「最終処分場の適地を見つけることは可能」と語り、建設地選定に意欲を見せた。

昨年の東京電力福島第一原発事故では、使用済み核燃料プールの冷却が止まり、過熱が心配された。マクファーレン氏は「ドライキャスクは水を使わず、非常時でも運用が容易」と語り、安全性が高まるとした。

使用済み核燃料の最終処分場は、オバマ政権がネバダ州ヤッカマウンテンへの建設計画を打ち切り、宙に浮いたまま。その影響で、NRCは今月7日、原発の新設や運転期間延長の認可を一時的に凍結した。

(2012年8月15日20時28分 読売新聞)

--転載ここまで--



つまり、使用済みの核燃料を水で冷却するとトンデモナイことが起きますよ、と言っているのである。

例えば、こんなことである。





(参考)

ポポカテペトル火山噴火 投稿者 Hatajinan
(3号機の原子炉建屋爆発は、火山の水蒸気爆発と同じ原理とも言えるのではないか。)


アリソン委員長はフクイチ3号機原子炉建屋爆発を見て、『使用済み核燃料の長期保管は水冷式よりも空冷式をチョイスするのが得策』だと判断したのだろう。

ところで、実は、水を反射材に利用した原爆について、かつて日本でも研究開発が行われていたことはご存知だろうか。かの仁科博士のニ号研究である。



www.marino.ne.jp/~rendaico/jissen/hansenheiwaco/gensuikinundoco/genshiryokukenkyushico/nihonnokaihatushi.html

 また、技術的には、理化学研究所の熱拡散法はアメリカの気体拡散法(隔膜法)より効率が悪く、10%の濃縮ウラン10kgを製造することは不可能と判断されており、京都帝国大学の遠心分離法は1945年の段階でようやく遠心分離機の設計図が完成し材料の調達が始まった所だった。

 原爆の構造自体も現在知られているものとは異なり、容器の中に濃縮したウランを入れ、さらにその中に水を入れることで臨界させるというもので、いわば暴走した軽水炉のようなものであった。濃縮ウランも10%程度ものが10kgで原爆が開発できるとされており、理論自体にも問題があった。しかし、1999年9月の東海村JCO臨界事故は、この構造で爆弾にはならないが、殺傷可能な兵器になることの悲しい証明となった。

---------------------抜粋


炉心を冷却する注水量が増えすぎれば再臨界の危機が迫り、逆に注水量が減れば、水素爆発の危険性が高くなるという、てんで首がまわらない状態なのである。こんなもの、人類が手を出すのには100年早い。それが結論。ちゃんちゃん。
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Category:福島第一原発事故

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