フクイチ事故の核燃料デブリは未だに誰も見ていない。
2012/10/26(Fri) 19:36
デブリ - Wikipedia311クライシスが引き金になった福島第一原発事故。あれからもう一年半以上が経過した。スリーマイル島原発事故。チェルノブイリ原発事故。過去の大きな原発事故の例にならえば、これから先、福島第一原発事故の後始末には途方も無い時間と金が注ぎ込まれることになる。
日本政府(現野田政権)が”冷温停止状態”という新造語をぶち上げ、フクイチ事故の収束を宣言したのは昨年末であった。事故収束にむけてのロードマップにあるステップ2が達成できたことが事故収束という判断につながったようだ。
ステップ2の達成というのは、『放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている』状態であり、つまり、これ以上は事故による被害は拡散しないという判断である。このことをもって『事故収束』につなげるかどうかには大きな疑問がある。

先日も、日本列島に54基も原発時限爆弾を仕掛けた自民党の総裁になった安倍晋三が初めてフクイチを訪れ、1号機から4号機までをバスの中から間近で見て、「事故収束したとは言えない状況だ」とコメントした。
福島第1原発を視察=「事故収束とは言えない」―自民・安倍総裁 via The Wall Street Journal 日本版 –
http://lucian.uchicago.edu/blogs/atomicage/2012/10/03/ldp-abe-the-acciden-has-not-ended-in-fukushima/

(フクイチ見てきたけどバスから降りなかったよ。だって危ないじゃん。)
事故は収束したか否かを問う前に、福島第一原発事故で1号機から4号機までの原発プラント4基が救いようのない穀潰しと化したのは事実である。そして、事故炉の廃炉に向けて、どうしても克服しなければならない問題がある。核燃料デブリの回収作業である。事故収束に向けてのロードマップの中期的な課題の部分である。

核燃料デブリは、メルトダウンして溶け落ちた核燃料である。圧力容器内にとどまっているかもしれないし、厚さ10センチ以上のステンレス鋼を突き破って格納容器内に溶け落ちているかもしれない。チャイナ・シンドロームが起こっているかもしれない。スリーマイル島原発事故では、制御棒駆動装置の一つからスコープを入れて調査するまでに3年の月日を費やした。そして、核燃料デブリを回収するべく、圧力容器の上蓋を外すのに、さらに2年を費やした。ここまでで5年。さらに核燃料デブリを99%回収するまでに5年を費やした。
スリーマイル島原発事故から30年ほか(1)
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/c888624147fc5f5e33bf2d353c961140
チェルノブイリ原発事故に至っては、爆発した原子炉建屋を覆う石棺の老朽化が深刻で、石棺そのものを覆うアーチ型の巨大な鉄製カバーを建設中である。石棺自体は、原子炉建屋から放射能が漏れ出さないよう対処されたものであったし、無論、石棺で覆ったからといって事故収束したとは到底言えるものではなかった。チェルノブイリ原発事故は『2025年から、4号機の解体と使用済み核燃料の取り出しを本格的に開始する予定』である。つまり、事故から40年経ってようやく本格的な収束作業に取り組むことになる。
チェルノブイリ、石棺覆う起工式 耐用百年の巨大アーチ - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012042601001850.html

スリーマイル島原発事故では核燃料デブリの回収に10年を費やした。チェルノブイリ原発事故では爆発直後に原子炉建屋ごと蓋をして放射能の拡散を防いだわけだが、炉内の核燃料デブリは未だに回収されず、2025年に回収開始が予定されている。事故から40年後である。核燃料デブリが回収されなければ廃炉も解体もできない。それは言わずもがなであるが、原発事故の収束とはないか。その事を考えさせられるようだ。
先般、1号機の原子炉建屋内格納容器の内部は毎時10シーベルトが検測されている。同じ調査で、実は毎時10万シーベルトというとんでもない数値が検測されていたことについては以前、記事に書いた。福島第一原発1号機で計測された最大線量は毎時10シーベルトではなく、本当は毎時10万シーベルトである。 2号機の格納容器内に至っては、なんと、毎時73シーベルトである。毎分約1シーベルト。放射線治療で局部に浴びせる放射線量は1シーベルトという。つまり、2号機の格納容器内はたった1分、そこにいれば、脱毛するほど被曝してしまうということになる。これほどまでの高線量は、核燃料デブリが再臨界していないのが事実であれば、2号機格納容器内は相当量の放射能で汚染されているということになる。
http://photo.tepco.co.jp/date/2012/201209-j/120911-27j.html


2011年3月23日に撮影された2号機地下電源室内。拡大してもらえばわかるが、無数のノイズが写り込んでいる。つまり2号機の原子炉建屋内は相当な汚染状態にあるということだ。
1分、そこにいただけで、がんの放射線治療と同等の線量を浴びるってどんだけ?って普通の感覚では思うはずだ。実際に、フクイチ2号機原子炉建屋格納容器内の毎時73シーベルトというとんでもない数値が計測されている以上、作業員は中に入って作業することはできない。人が中に入って作業することすらできないのに、収束宣言もへったくれもないのである。現に、1号機、2号機、3号機の原子炉建屋内での収束作業は無線操縦ロボットによる調査がメイン(4号機の原子炉建屋は例外)である。ついこの間も3号機原子炉建屋地下階を調査中の無人ロボットが操縦不能になり、回収できなくなったばかりであったし、3号機使用済み核燃料プールのがれき処理中に鉄骨をプール内に滑らせたと報じられたが、そもそもが無人操縦なのであり、プール周囲に乱雑に積み重なる鉄骨やガレキを崩さずに撤去するといった非常にデリケートな作業を人手を介さず遠隔操作で行なっていたからであって、あまりにも分かりきった結果であった。
最近、ふくいちライブカメラの4号機側からのアングルに設置変更されたのだが、朝7時から、タイベックスを着込んだ幾人もの作業員が忙しなく動きまわっている。4号機の核燃料取り出しに向けた準備作業であろう。このアングルは、フクイチ事故が着実に収束に向かっているという認識を与えるかもしれないが、実のところ、無人ロボットによる調査ばかりで収束作業といえる状態とはいえない1号機、2号機、3号機の後ろ向きな進捗状況から目を背けさせるためのパフォーマンス的な意味合いがあるのではないかと勘ぐってしまう。
人類は、原子炉の圧力容器を突き破った核燃料デブリを回収する技術も知恵も有していない。スリーマイル島原発事故では核燃料デブリはかろうじて圧力容器内にとどまっていた。それでも取り出すのに事故から10年がかかった。チェルノブイリ原発事故では未だに手付かずのまま放置されている。フクイチ事故の収束に向けてのロードマップの中で中期的課題に含まれている核燃料デブリの回収作業であるが、格納容器に溶け落ちて固まった核燃料デブリの回収技術が確立されていないから、先延ばしにしているだけである。この、未来に解決策が生み出されているだろう的な原子力業界特有の思い込みは、倫理的に問題があると思う。回収した核燃料デブリをどこで保管、管理するかという問題も克服する必要がある。最終処分場の問題ともつながってくる。原発は罠だった。騙されていたんだ。そう反省していち早く原子力産業から手を切らなければいけない。無論、再稼働などは、論外である。
原爆を落とした側が地震ですぐに壊れる原発爆弾装置を仕掛けていった。
原発再稼働に大義はない。
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