原発事故を起こすのに『想定外の津波』はいらない。 2 RCIC手動起動と原子炉水位低L-2のトリガー外し
2012/07/28(Sat) 00:34
福島第一原発1号機と3号機は、ECCSが致命的な配管破損をもたらした。原発事故を起こすのに『想定外の津波』はいらない。
311クライシスの9ヶ月前、フクイチ2号機で外部電源喪失事故が発生した。原子炉トリップした後に外部電源が30分失われ、原子炉水位を2メートル低下させたものである。L-2まであと40センチであった。
そして、このフクイチ2号機外部電源喪失の際、運転員はRCICを手動で起動させている。
原子炉外部電源全喪失事故レポート : 風のたよりーいわき市議会議員 佐藤かずよし
http://skazuyoshi.exblog.jp/12974707/
●「福島第一原発2号機 原子炉外部電源全喪失事故」に関するレポート
6.17/7.9東電本社ヒアリングをもとに
2010.7.15 東京電力と共に脱原発をめざす会
1.事故の概要
・今回の原子炉「自動停止」は、10.06.17(14:52頃)発電機界磁遮断器「トリップ警報」に始まり、「発電機」「タービン」「原子炉」の順に自動停止した。
・しかし、その後外部電源に切り替わらなかったため、外部電源全喪失の事態となった。
・これを受けて、ただちに非常用ディーゼル2基が自動起動し、非常用交流電源は回復した。
・運転員は原子炉トリップによる原子炉水位の低下に備えて、タービン駆動による隔離時冷却系(註・RCIC)を手動起動した。水位は14:53頃-800mm(註・原子炉水位低の40センチ上。通常運転時の水位より2メートル下がった位置だと思われる。)に達し、そのまま横ばいで推移し14:58には水位回復した。
---------------------抜粋
http://skazuyoshi.exblog.jp/12974707/
●「福島第一原発2号機 原子炉外部電源全喪失事故」に関するレポート
6.17/7.9東電本社ヒアリングをもとに
2010.7.15 東京電力と共に脱原発をめざす会
1.事故の概要
・今回の原子炉「自動停止」は、10.06.17(14:52頃)発電機界磁遮断器「トリップ警報」に始まり、「発電機」「タービン」「原子炉」の順に自動停止した。
・しかし、その後外部電源に切り替わらなかったため、外部電源全喪失の事態となった。
・これを受けて、ただちに非常用ディーゼル2基が自動起動し、非常用交流電源は回復した。
・運転員は原子炉トリップによる原子炉水位の低下に備えて、タービン駆動による隔離時冷却系(註・RCIC)を手動起動した。水位は14:53頃-800mm(註・原子炉水位低の40センチ上。通常運転時の水位より2メートル下がった位置だと思われる。)に達し、そのまま横ばいで推移し14:58には水位回復した。
---------------------抜粋
同様に、福島第一原発事故の際、2号機と3号機はRCICを何度も手動で起動させている。


事故時運転操作手順書には、『積極的にRCICを手動で起動せよ』とはどこにも書かれていない。むしろ、『RCICは自動で起動するから、その確認をせよ』と書かれている。
http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/manual/1f-2/2u-1-04.pdf

給水喪失事象
なぜ、運転員はRCICの自動起動を待たずして、手動で起動させたのか。
運転員のスタンドプレーなのか。
RCICの自動起動は原子炉水位低L-2であり、同様に、HPCIの自動起動も原子炉水位低L-2である。つまり、RCICの自動起動を待っていたら、同時にHPCIも起動してしまうのである。

HPCIを起動させたくなかった。RCICを手動で起動させたことは、ただ、この一言で説明できてしまう。
HPCIはRCICの吐出量の10倍である。配管の口径も素材の厚みもHPCIの方が上だ。冷水が流入した時に受ける影響は計り知れない。
福島第一原発の1号機と2号機はHPCIが一切動いていない。唯一起動した3号機は、翌12日HPCIが原子炉水位低により自動起動したのち、原子炉圧力がみるみるうちに抜けていき、HPCIを停止した(弁を閉めた)のちに原子炉圧力は上昇した。
フクイチ2号機の外部電源喪失事故の際、運転員がRCICを手動で起動させたのも、フクイチ事故で2号機と3号機で何度もRCICを手動で起動させたのも、HPCIを起動させたくなかったからだとしたら説明が付く。
さらに、もう一つ。
311クライシス本震時、HPCIを起動させないために、原子炉水位低L-2のトリガーは外されていたのではなかったか。2号機のプロセス計算機データに、その明確な証拠がある。
原子炉水位低(L-2)

RCIC起動信号・注入弁開

まず、一枚目が原子炉水位低(L-2)のプロセス計算機データである。二枚目がRCICの起動信号と注入弁開のプロセス計算機データである。原子炉水位低L-2がOFFからONに切り替わったのが311の本震直後であることに注目して欲しい。それ以前は、OFFの状態。つまりトリガーが外されていたのである。そして、原子炉水位低L-2がONに切り替わったあと、RCICの起動信号がONになっている。原子炉水位低が”ON”に切り替わっていないとRCICは起動しない仕組みであるならば合点がいく。
さらに、原子炉水位低は15時30分にOFF、そして10分後にONになっていることに注目したい。これはRCICが原子炉水位高でトリップしてしまい、再起動させるために原子炉水位低の自動起動信号を入れなおしたとすれば矛盾はない。
本来ならばONであるはずの原子炉水位低の自動起動信号が、311本震前まで外されていたのは、はたしてなぜなのか。原子炉水位低L-2の自動起動信号でRCICが自動起動するとともにHPCIも起動してしまうからではなかったか。HPCIが流入させる常温水が、300℃近くにまで熱せられた脆性劣化著しい圧力容器や周辺配管に猛烈な熱衝撃を与え、致命的な破壊をもたらすことを恐れて、意図的にトリガーを外していたのではなかったか。
311の九ヶ月前のフクイチ2号機外部電源喪失事故の際、運転員がRCICを手動で起動させたのも、311本震直後、2号機3号機のRCICが手動で何度も起動されているのも、2号機のプロセス計算機データに示される『原子炉水位底L-2のトリガー外し』をも考えれば、HPCIを起動させたくなかったことは明白であり、福島第一原発事故の当事国である日本が、国家的責務として世界に発信しなければいけないのは、重要安全装置であるHPCIが起動してしまうと300℃近い原子炉に冷水を浴びせることになってしまい、脆性破壊を引き起こす可能性があるということではなかったか。経年数を経たプラントであればあるほど、過酷事故に発展しかねないと警鐘を鳴らすべきではなかったか。愚かしくも原発を再稼働させたりせず、世界中の高圧注水系を採用している原発プラントを使用禁止にするべく、声を上げるべきではなかったか。
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Category:福島第一原発事故の真相に迫る!
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