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原発再稼働に大義はない。

2012/07/16(Mon) 00:20



原子力発電プラントで燃やされた使用済み核燃料は、一部がMOX燃料の原料として取り出され、残りが高レベル放射性廃棄物として処分される。正確にいえば、『処分する予定』だ。再処理工場で生み出される高レベル放射性廃棄物は10万年という途方もなく長いスパンでの管理が求められる。

原発から生み出される使用済み核燃料を再処理しようと考えだされたのが核燃料サイクルである。核燃料サイクルとは永久機関のようで聞こえはいいが、MOX燃料を既存の原子炉で燃やすのは未知な危険が介在するし(現に原子炉建屋が大爆発した福島第一原発3号機はプルサーマルであった)、使用済み核燃料からMOX燃料の材料として取り出されるのは、全体の割合からすると僅かなものである。大量の残りカスは最終処分場で保管される”予定”である。


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今現在、高レベル放射性廃棄物の処分場は世界のどこにも無い。フィンランドのオンカロは2020年操業予定であるし、原発大国フランスはようやく候補地が決まったばかりだ。ドイツにいたっては最終処分場計画そのものがご破算になった。アメリカ・ネバダ州ユッカマウンテンプロジェクトは1987年から20年以上工事を続け、オバマ政権樹立に併せて白紙撤回された。最終処分場の問題は世界が頭を悩ませている問題なのである。





1990年代後半、使用済み核燃料の中間貯蔵場所が近く満杯になることを見据えて打ち出されたのが核燃料サイクルである。ようは、最終処分場の問題を先送りするための姑息な案である。


ところで、日本における最終処分場計画はどうなっているのか。建設地選定は平成40年、候補地は平成20年代半ばに選定する予定でいるが、現実には何も決まっていないと同じである。


最終処分場問題


地下水脈が豊富にあり、地震大国の日本で10万年管理可能な場所などどこにもない。どれほど頑強な作りにして、地震で構造物にひびが入ることは防ぎようがないし、そのひび割れから地下水が漏水し、高レベル放射性廃棄物の容器を腐食する可能性もある。今現在、日本では第一段階である概要調査地区選定すら未定のままである。


高レベル放射性廃棄物の最終処分場の問題よりも先にガラス固化体製造の問題がある。MOX燃料の材料が取り出された使用済み核燃料の残りカスは、溶解炉でガラスと混ぜ、ガラス固化体が製造される。青森県六ケ所村にある再処理工場は、このガラス固化体製造の時点でトラブルが相次ぎ、未だにガラス固化体製造試験をクリアしていないのである。


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高レベル放射性廃棄物は10万年管理しなければならない。計り知れない、途方も無い時間である。さらには、10万年管理する前段階であるガラス固化体製造試験にパスすら出来ていない。はたして、日本に原発を稼働させる資格はあるのだろうか。



チェルノブイリ原発事故は25年という歳月を費やしながらも未だ収束していない。先般、石棺で覆われたチェルノブイリ原発4号機に、新たにカバーをかけると報じられた。本来ならば解体撤去といった作業工程になるのだが、猛烈な放射能汚染により人出による作業が全くできない状況である。

他方で、福島第一原発事故で炉心溶融を起こした1号機2号機3号機はどうだろうか。建屋上部が木っ端微塵に砕け散った1号機の原子炉建屋には石棺よろしくカバーが掛けられているが、最も損傷が激しい3号機の原子炉建屋は野ざらしのままである。

原発は、ひとたび事故を起こせば、プラント周囲は猛烈な放射能汚染にさらされ、人が住むことはおろか、立ち入ることすらできなくなってしまう。


フタバから遠く離れて 予告編 from Atsushi Funahashi on Vimeo.




事故の後始末すら一筋縄ではいかない。原子炉建屋の中は猛烈な放射能汚染で、一時間で致死量の放射線を放ち続けている。事故から一年4ヶ月が経過しているが、もっぱらロボットによる調査がメインである。先日も3号機の原子炉建屋を調査していたロボットが操作不能になったと報じられた。回収される見込みはない。

ロボット投入、操作不能に=3号機原子炉建屋地下で―福島第1 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
http://jp.wsj.com/Japan/node_476410


福島第一原発事故に真摯に向きあえば、政治家は原発プラントを即刻廃し、原子力エネルギーから脱却する道筋をつけるのが当然である。事故の後始末に何十、何百年と追われ続けなければいけないことを考えればすぐに分かりそうなものである。だが、愚かしいことに、現政権は全く真逆の決断をしてしまった。大飯原発3号機を再稼働させてしまったのである。


大飯原発3号機がフル稼働 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120709-OYT1T00009.htm?from=tw

 関西電力大飯原子力発電所3号機(福井県おおい町、出力118万キロ・ワット)が9日午前1時、フル稼働に達した。

 電力需給が改善するため、政府と関西電力は2010年夏比で「15%以上」としていた節電目標を「10%以上」に緩和する。

(2012年7月9日01時16分 読売新聞)

--転載ここまで--


関西電力は常々、『原発を稼働させなければ真夏のピークに足らず、計画停電を断行することになる』と散々脅してきた。そして大飯原発3号機を再稼働させた後、火力発電所を次々に停止した。原発を稼働させなくても電力需給が十分に足りていたことの裏返しである。


関電の予報、来週以降も需給安定 さっそく大飯3号分を織り込む - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120706/biz12070620100020-n1.htm

2012.7.6 20:09
 関西電力が6日発表した電気予報によると、7月第2週(9~13日)の使用率は85~88%、第3週(17~20日)の週を通じた使用率は89%を見込み、いずれも「安定」の判断となった。9日にも大飯原発3号機(福井県おおい町)がフル稼働となる予定で、第2週の供給力には3号機の出力118万キロワットを織り込んだ。

 3号機のフル稼働で供給力が上積みされることから、関電は点検などの目的で運転を一時停止する火力発電所を増やす。配管の蒸気漏れで停止中の姫路第2発電所4号機(兵庫県姫路市)を含め、第2週に計8基を一時停止させる計画だ。

 2~6日の使用率実績は、6日に蒸し暑くなった影響で91%となる時間帯があったが、2~5日のピーク時は83~87%で安定していた。

--転載ここまで--






気がつけば、日本列島をぐるりと一周取り囲むように原発が建っていた。今や、日本は世界第五位のプルトニウム保有国であるという。アメリカが設計しフランスが再処理しイギリスがプルトニウムを買い取る。日本は戦勝国のいいなりのまま核兵器産業に片足を突っ込んでいるのである。

広島、長崎とは一体何だったのか。憲法九条とは一体何なのか。非核三原則とは一体なんだったのか。横須賀に原子力空母が寄港すれば騒ぎ立て、北朝鮮が地下核実験すれば騒ぎ立て、日本は核廃絶を切望していたのではなかったか。

福島第一原発事故とは、核なき世界という尊い理想を思い直し、悔い改める機会だったのではなかったか。そもそも、我が日本は原子力エネルギーに依存することを望んでいなかったのではなかったか。


事故の後始末のみならず、核のゴミの後始末も未来に付け回す。ECCS作動による脆性破壊は全く問題視されず、外部電源喪失についてもろくな対策も取っていない。地震がない場所で開発されたプラントは、津波の被害をもろに受ける沿岸部に建っている。原発などに頼らなくとも十分な電力需給を確保しているのに、嘘八百を並べては原発を稼働させる。原発を稼働させることには大義はないし、当方は、日本で再度原発事故を起こそうとしているのかと訝ってしまうのである。



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Category:福島第一原発事故

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