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福島第一原発事故の真相に迫る! 8 〈主蒸気逃し安全弁が機能不全に陥ったわけ〉

2011/12/26(Mon) 07:21

”福島第一原発事故は、311本震でトリップスクラムした原発に、巨大津波が襲いかかり、非常用ディーゼル発電機を不能にした結果、全電源喪失(ステーションブラックアウトSBO)に陥り、メルトダウンはおろかメルトスルーまでもを防ぎ得なかった。”

バカである。福島第一原発の事業主である東京電力は、想定外の津波に責任転嫁することで原賠法で救われようと躍起になっているのである。

福島第一原発事故の真相とは一体なんなのか。当ブログ上にて何度も何度も取り上げてきた。チェルノブイリ四機分の負債を未来に押し付ける理由が想定外の津波だと言うのが、今をもって理解出来ないからだ。

津波が原因?
だったら始めっから沿岸部に建てんじゃねえよ。

この一点にのみ、原発の七面倒臭い専門用語や種類や仕組みを勉強させ、事故原因の探求に駆り立てるのである。

今回のブログエントリは福島第一原発事故の真相に迫る!!7 〈津波でなく、地震でなく、事故を決定的に悪化させたのは外部電源喪失である。〉 で軽く触れた、1号機の非常用復水器について取り上げてみたい。少し専門的なことになるので、福島第一原発事故の原因が津波のせいであると信じて疑わないのなら、読み進める理由はない。




■ 1号機2号機対応の超高圧開閉所は地震で壊れたことをこっそり認めちゃっている件

2011年3月11日14時46分の宮城沖地震M9.0の地震により、福島第一原発の1号機2号機3号機は地震加速度大のトリップ警報を受けてスクラム(緊急自動停止)した。ものの2~3秒の内に全制御棒が挿入され、タービン、発電機が自動停止した。

BWRの原子炉は280~290度、70気圧という高温高圧下で運転される。警報トリップによりスクラムした後は、主蒸気隔離弁と呼ばれるMSIVが閉鎖され、原子炉プラントから発電機能が隔離されることになる。

原子炉からタービンにつながる主蒸気管は50センチである。ぶっとい。これが四本あり、でっかいタービンを回し、発電所の電力を生み出している。原子炉というのは恐ろしく沸騰しているのだなあとイメージを沸かせるしか無い。

緊急トリップ信号を受けてスクラム停止(緊急自動停止)した原発プラントは直ちに全制御棒が挿入されタービン→発電機の順で自動停止される。原発プラントの炉心冷却装置は給水ポンプ、復水ポンプ、再循環ポンプMGセットなどの高圧線6900ボルトで供給される大型装置でまかなわれている。

福島第一原発に敷かれていた外部電源は大熊線で66000ボルトである。前回のブログエントリーの冒頭で、高圧線の十倍の容量である超高圧線の1号機2号機対応開閉所が地震で壊れた可能性に触れた。先に公開されたプレスリリースで東電はここが地震で壊れたことをこっそりと白状した。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111222p.pdf
1号機2号機


青の矢印の部分に注目したい。311クライシス当日の午後21時前、[ 2号機:P/Cは使用見込み有。M/C使用不可。]との報告が上にあげられている。ここで言うM/Cとは高圧線6600ボルトを低圧線480ボルトに変圧する設備のことでメタクラと呼ばれている。P/Cはパワーセンター。低圧線480ボルトを125ボルトに変圧する装置である。

官庁報告から三十分後の21時19分、1号機の原子炉水位がTAF+20センチであることが判明。もはや手のひら1つ分しか冠水していない異常状態。メルトダウンの前段階である”冷却材枯渇による炉心むき出し”寸前であった。原子炉水位低下を官庁に報告を入れたのは22時10分、原子炉水位がTAF(燃料頭頂部)+45センチであった。注水機能不全に陥っていたはずなのに、なぜか数値が増えていた。

唯一被水を免れた2号機のP/Cの健全性が確認されると、全機に低圧線電源が供給できるようMCC(低圧線の分電盤)を設置し、仮設電線を引き込むプランが決まる。他方、福島第一原発に高圧電源車が到着したのは22時。総力をかけて電源復旧に取り組むことになる。

23時、1号機タービン建屋で1.2mSvという異常値を記録。23時40分に官庁等に連絡をいれる。翌12日未明0時6分。大気圧以下に保たれている格納容器で600キロパスカルという設計圧力を超過した数字が検出される。

311クライシスから翌12日未明にかけての1号機の時系列を簡単に説明したが、ここいらで一先ずやめて本題に入りたい。




■ 主蒸気逃し安全弁はなぜ機能しなかったのか。


当方が知りたいのは、地震から津波が襲来するまでの間の出来事である。とくに詳細まで知りたいのがBWR3採用の1号機である。地震から津波襲来までの一時間弱で、1号機は致命的な原発事故に発展していた可能性がある。そのヒントは、最近やたらと避難されている非常用復水器にあると見ている。

とかく非常用復水器に関しては最近になって否定的に取り上げられているようだ。

【放射能漏れ】「非常用復水器」すぐ稼働なら炉心溶融なかった 原子力安全基盤機構調査 - MSN産経ニュース :
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111209/dst11120919150008-n1.htm

asahi.com(朝日新聞社):原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機 - 社会 :
http://www.asahi.com/national/update/1217/TKY201112170568.html


「復水器の再稼働遅れ」に注目集まる メルトダウン防げた可能性あるのか (1/2) : J-CASTニュース :
http://www.j-cast.com/2011/12/20117067.html

福島第1原発事故をめぐる政府の事故調査・検証委員会の中間報告が近く公表されることもあり、事故原因に改めて関心が高まっている。最近の報道をみると、1号機の冷却装置「非常用復水器」(IC)に関する話が目に付く。
各種報道の論点を簡単に整理すると、電源喪失により弁が閉じて機能しなくなった1号機のICを早めに復旧させていれば、メルトダウン(炉心が溶け落ちる)を避けられた、もしくは遅らせることができたのでは、という指摘だ。

---------------------抜粋


NHKなどは東電の極めて恣意的なシュミレーションをもとに特番ドラマをわざわざ作り、非常用復水器が唯一の最小必須冷却機能だったと御用学者どもに証言させるほどの熱の入れようである。一言だけ言わせてもらう。こいつらは大バカである。



「メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が」 (2/2) 投稿者 sean2010jp



「メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が」 (1/2) 投稿者 sean2010jp


Google 画像検索結果- http---www.anaroguma.org-komake-fukushima-photo_Oct3-ic1.jpg 


スクラム停止直後を高温停止という。高温停止から冷温停止させるには原子炉水位を保ちながらゆっくりと減圧し、冷却していく必要がある。全電源喪失発生時の高温停止の原子炉を冷温停止させるステップは以下である。

www.pref.aomori.lg.jp-soshiki-kikaku-atomsafe-files-2011-0627-2103.pdf
高温停止から冷温停止にいたるまで。


チャートの冒頭、ノコギリの歯のようなぎざぎざが見受けられる。これは主蒸気逃し安全弁が原子炉圧力高の信号を受けて自動起動し、設定圧力に併せて閉鎖されるサイクリングを表している。主蒸気逃し安全弁の出口は格納容器のサプレッションチェンバーと呼ばれるプールで、原子炉から発電機能が隔離された後の圧力制御は主蒸気逃し安全弁の自動起動で行うのが全電源喪失時の正しい操作だといえる。

2号機3号機の過渡現象記録装置にはコレとそっくりなチャートが記録されている。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_6_Katogensho2.pdf
原子炉圧力 2号機
2号機の原子炉圧力・過渡現象記録データ

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_6_Katogensho3.pdf
3号機チャート
3号機の原子炉圧力・過渡現象記録データ


他方、1号機の原子炉圧力はどのように推移しているのか。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_6_Katogensho1.pdf
原子炉圧力 1号機
1号機の原子炉圧力・過渡現象記録データ


2号機、3号機の原子炉圧力の推移は主蒸気逃し安全弁による減圧のサイクリングと合致している。他方、1号機のチャートは主蒸気逃し安全弁を用いたサイクリングとは言い難いチャート直線を描いている。

これは、非常用復水器の開閉により、圧力制御していたことを示している。

時系列 1号機

このように、事故解析シュミレーションにもICの起動停止実績が入力されているのだが、全電源喪失後の減圧機能を非常用復水器が代替するというのはなかなか腑に落ちないものである。非常用復水器の水位計と圧力計をにらめながら手動で圧力制御するよりも、主蒸気逃し安全弁を自動でパカパカさせていた方がはるかに理にかなっていると考えるのが妥当ではないか。

なぜ、主蒸気逃し安全弁を有効利用することなく、本来は冷却機能を担当する非常用復水器が減圧装置を代替しなければならないのか。もはや存在意義すら無い原子力安全・保安院だが、1号機の主蒸気逃し安全弁が起動しなかった理由について、以下のように説明している。


http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/houkoku6/siryou07-rev.pdf

IC(非常用復水器)の自動起動インターロック(原子炉圧力高)設定圧力は7.13MPaであり、原子炉圧力の上昇に伴うSRV(主蒸気逃し安全弁)の動作(7.27MPa)前に自動起動する。今回、原子炉圧力をICによりSRV動作圧力以下で制御したため、SRVは動作していない。

---------------------抜粋


確かに主蒸気逃し安全弁のトリガー設定圧力よりも非常用復水器のトリガーの設定圧力が低ければ、主蒸気逃し安全弁は作動しないことに論理矛盾はない。ただし、非常用復水器は減圧機能を有してはいるものの、放射能を除去する機能は実装されておらず、一度水を潜らせた蒸気がだだ漏れの状態で大気に放出されるのである。減圧する過程で排出される蒸気の向かう先に問題がある。非常用復水器を減圧装置として使用する際は、蒸気は直接大気に放出される。ロートルな無電源冷却装置は、そもそも原子炉隔離時の減圧機能を最小限しか有していないのである。

非常用復水器ベント管
1号機 非常用復水器ベント管




■ 1号機の主蒸気逃し安全弁はLOCA(配管破断)信号でフェイルセーフされていた。

全電源を喪失した発電用プラントが高温停止から冷温停止にステップさせるにあたり、ウランの崩壊熱による高温高圧状態から逸脱できない原子炉の圧力は、原子炉圧力高による主蒸気逃し安全弁の自動制御が担当する。2号機3号機のチャートを見ても明らかなように、原子炉圧力が高まれば主蒸気逃し安全弁は勝手にパカパカ開き、自動制御により減圧されるもので、非常用復水器を代替する理由が見つからない。

なぜ、1号機の主蒸気逃し安全弁は機能不能におちいったのか。非常用復水器を代替して減圧を制御することになったのか。当方が知りたいのは、このあたりの正確な情報である。

不可思議なことに、東電は地震直後から翌12日未明にかけてのデータを喪失させたとして公開していない。

情報・データを出さない東京電力

E59CA7E58A9BE6B0B4E4BD8DE5A489E58C96.jpg

過渡現象記録データ、チャート、プロセス計算機データは1号機2号機は地震発生から15時16、7分までは示されており、3号機は津波襲来後の16時過ぎまで記録が残っている。

福島第一原発事故の事故調入りした田中三彦氏によれば、1号機の主蒸気逃し安全弁を運転員が起動させた証拠が一切無く、自動制御で開放された記録が一切残っていないという。これは非常に重要な指摘である。

問題は、主蒸気逃し安全弁が起動した証拠すらないのにもかかわらず、なぜ1号機の格納容器圧力が大気圧の六倍もの圧力に増大したのかである。蒸気が放出されることにより冷却材喪失をフェイルセーフする設計がプログラミングされているはずだ。




■ 配管破断と脆性破壊

老朽化した原子炉プラントには致命的な欠陥がある。長期間の中性子被曝により、鋼鉄は脆性遷移温度が遷移することがあるという。鋼鉄が中性子を浴び続けることによって脆性を劣化させ、ガラス化してしまう現象である。水に濡れたコップに熱湯をかけるとパリンと割れるように、原子炉の炉材である鋼鉄すら割れてしまう可能性があることは、89年にすでに田中三彦氏と広瀬隆氏が警鐘を鳴らしていたことだ。

原子力発電で使われる原子炉圧力容器には致命的な欠陥がある。

玄海原発4号機の不可解な再稼働を考察する ~原発再稼働で地震兵器の恫喝をより効果的に~

配管破断の傍証として、1号機のPLRポンプ入口温度のチャートをあげておく。PLRポンプとは再循環ポンプのことで、非常用復水器の給水ラインが接続されている部分である。311当日本震六分後に自動起動した非常用復水器の給水ラインが開かれたとき何が起こったのか朧気ながらも見えてくるものがある。

http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/houkoku6/siryou07-rev.pdf
1号機 原子炉再循環ポンプ
非常用復水器の給水ライン接続部付近で100℃以上の温度差があることに注目したい。


このチャートが示すのは、その極端な温度差である。赤・130℃ 緑・150℃。脆性破壊の観点から、これは致命的な温度差なのではあるまいか。

今一度、運転員が1号機の非常用復水器を停止させた理由を思い出して欲しい。



1 号機の原子炉圧力の低下が速く,操作手順書で定める原子炉冷却材温度降下率55℃/h が遵守出来ないと判断し,IC の戻り配管隔離弁(MO-3A,3B)を一旦「全閉」とした。


非常用復水器の弁を開いて、接続先である再循環ポンプ配管は猛烈なダメージを受けたのは、想像に難くない。


2012/02/29 加筆修正

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Tag:福島第一原発事故 

Category:福島第一原発事故の真相に迫る!

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2011/12/26(Mon)21:43

全く理解できません。
原子炉エンジニアでないので当たり前ですが。

さて、2chに以下のような記載がありました。

>スクラム系統は電源が全喪失すると炉心上の爆破弁が作動し屋上タンクのホウ素水を浴びせます。
>まー当該原子炉は2年は使い物になりませんが事故は防ぎます。
>http://twitter.com/#!/hondarer/status/46160975124119552

ここで質問です。
全電源喪失すると爆破弁作動は自動的に行われますか?
爆破弁は、誰かがスイッチを押して作動させるものですか?

爆破弁は一号機において使われましたか?
爆破弁は三号機において使われなかったのですか?

名前:懐疑 (URL) 編集

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