福島第一原発事故の真相に迫る!!7 〈津波でなく、地震でなく、事故を決定的に悪化させたのは外部電源喪失である。〉
2011/12/13(Tue) 00:27
311クライシスの九ヶ月前に起こった福島第一原発2号機外部電源喪失事故(東電はリレーの故障と人為的ミスだとひと月後に再稼動させたが)が知らしめたものは原発の最後の砦だといわれた非常用発電機が起動しても30分で原子炉水位を2メートル低下させてしまうということだった。
福島第一原発事故は津波のせいなどではない。こんな理由で未来にどの面下げるのだ。本当は、津波襲来までの一時間で勝負はあったのではなかったか。さらにいえば、所内側遮断機の不具合による外部電源喪失、また、それを致命的に長引かせたことこそが、今ある福島第一原発の四炉の最悪の状況をもたらしたのではなかったか。

原発プラントのスクラム停止における内外部電源切替は、超高圧開閉所と呼ばれる建物で行われる。注目してもらいたいのは、大熊線1号2号を所内に引き込む1号機2号機兼用の超高圧開閉所が、津波による損傷が確認されていないのにもかかわらず、1号機と2号機は14時46分の本震の直後に外部電源が喪失したという事実である。さらにいえば、3号機と4号機兼用の超高圧開閉所は津波の襲来を受け浸水し不能に陥ってしまったのだが、地震直後から津波襲来までの小一時間、外部電源は超高圧開閉所を通じて所内に電源を供給していたはずなのに、実際は、3号機は地震直後に所内電源切替に失敗し、外部電源を喪失させてしまっている。これらについては後述する。
夜の森線2号の倒壊については共産党の吉井議員が国会質問したことで話題になったが、外部電源喪失の直接の原因になったのは1号機2号機は大熊線一号二号、3号機4号機は大熊線3号4号で外部電源を供給できなかったことにある。夜の森線2号の倒壊は外部電源の復旧作業を遅らせることになった。
1号機2号機兼用の超高圧開閉所は高台に設置されているから被災を免れている。以下に取り上げる岩田清氏のフクイチ事故究明サイトでは東電のプレスリリースから超高圧開閉所は地震で壊れたのではないかと推測している。
GoogleEarthで、ふくいちカメラの信憑性を裁く。その2
原子力発電のプラントの電源制御システムにある脆弱性については、もう何度も何度も取り上げてきた。
福島第一原発事故の真相に迫る! 1 〈2010年6月17日フクイチ2号機事故とベント隠し〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
福島第一原発事故の真相に迫る! 2 〈フクイチ2号機事故の推定経過と撤去された系統安定化装置〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
福島第一原発事故の真相に迫る! 3 〈韓国古里原発で相次ぐトラブルと2010年6月フクイチ2号機事故の類似性〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
福島第一原発事故の真相に迫る! 4 〈スタクスネットが世界中の原発をメルトダウンさせる?!〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
福島第一原発事故の真相に迫る! 5 〈玄海原発の深刻な脆性遷移温度とECCS作動の危険性〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
玄海原発4号機の不可解な再稼働を考察する ~原発再稼働で地震兵器の恫喝をより効果的に~ | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
■ 非常用ディーゼル発電機が自動起動するトリガー(引き金)は外部電源喪失である。
福島第一原発事故では、本震である14時46~7分に全機がスクラム停止したが、津波が襲来するまでの小一時間の間は非常用ディーゼル発電機が作動して所内電源を供給している。この事実は、裏を返せば、外部電源喪失したということである。
非常用ディーゼル発電機が自動起動するのは、内部電源が遮断されて且つ、外部電源が供給されないときである。内外部電源が通電していれば、非常用ディーゼル発電機は起動しない仕組みであり、仮に非常用ディーゼル発電機が稼動しているときに、外部電源が復旧すれば、非常用ディーゼル発電機はトリップし自動で停止する。これは電源制御システムに内包されるインターロック機能によるもので、高圧電流を交流させてしまうとシステムがダウンして全電源喪失という致命的自体を回避するべく設けられた安全機構でありフェイルセーフの一つである。
共用プールに置かれた2号機4号機兼用の非常用ディーゼル発電機を除く、1から4号機までの非常用ディーゼル発電機が自動起動を成功させたのは、東電が発表するプレスリリースの運転日誌にもちゃんと記載されていることだ。非常用発電機の起動は外部電源喪失の裏返しであるという前提に立ち、正確に事実経過を読み解く必要がある。
東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラントデータ集|東京電力 :
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index10-j.html
運転日誌・1,2号機
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi1_2.pdf
運転日誌・3、4号機
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi3_4.pdf
とかく興味深いのが3号機の運転日誌である。かなりページの奥の方ではあるが、所内電源切り替え失敗(原因不明)だと書かれている。これはすなわち、非常用ディーゼル発電機で交流できなかったことを示している。

給復水全停止というのは70気圧という超高圧下で運転される原子炉に冷却水を送るために必要なジェットポンプ等の冷却系主要設備が機能しなくなったことを表している。
いうなればフクイチ2号機外部電源喪失事故とまったく同じことが3号機で発生したのである。
311の9ヶ月前に発生したフクイチ2号機事故も、スクラム停止後に内外部の電源切替に失敗し、外部電源を喪失してしまっている。非常用ディーゼル発電機により電源供給されたというが、30分間の外部電源喪失で原子炉水位を2メートル低下させたのである。森ゆうこ議員の国会質問により、東電当時社長の清水が認めたことは福島第一原発事故の真相に迫る! 1 〈2010年6月17日フクイチ2号機事故とベント隠し〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~で取り上げた。

さらにいえばスウェーデンの原発事故でも22分間で原子炉水位を2メートル低下させる事態に陥っているが、これも所内側遮断器に不具合が生じたことにより、事故はもたらされたことがわかる。

外部電源喪失にもいろいろあるが、中でも所内側遮断器の不具合はきわめて致命的である。外部電源のみならず、非常用電源すら交流されないからだ。上記に取り上げたプレスリリースの添付資料はフクイチ2号機外部電源喪失事故のメカニズムを説明したものだが、所内側遮断器が落ちなければ、非常用ディーゼル発電機の交流電源は所内に交流しないのである。もちろん、非常用ディーゼル発電機から直流電源が供給される設備は限られていて、主だった冷却装置である給復水ポンプや再循環ポンプ、ジェットポンプなどに直流電源は引かれていないようである。
■ 福島第一原発1号機の非常用復水器自動起動のトリガーはいったい何か。
www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/pdf/04-accident.pdf
このPDFファイルにある1号機の主要時系列で非常用復水器(IC)の自動起動が14時52分に記録されている。本震から6分後のことである。

東京電力は非常用復水器が自動起動したのは原子炉圧力が高まったからだと説明していたように記憶しているが、炉内圧力を逃がすために後に加えられたのが逃し安全弁等のベント系装置である。通常70気圧という超高圧下で運転される発電用原子炉の炉内圧力が高まれば、自動でベント弁が開放され、音速の蒸気が放出されるのである。
原子炉水位とECCS自動起動レベルの関係図

非常用復水器はECCS(非常時炉心冷却系装置)である。ECCSは原子炉水位が2m40センチ低下したときがトリガーとなり、自動起動する仕組みになっている。あくまでECCSであり、減圧装置ではないのである。ゆえに、当方は非常用復水器が自動で起動したのは、原子炉水位が2メートル40センチ低下したからではないかと疑っているのである。
福島第一原発事故の真相に迫る! 2 〈フクイチ2号機事故の推定経過と撤去された系統安定化装置〉 | 憂いの果てに ~次男坊のアフォリズム~
原子炉プラントがスクラムした際に、外部電源が喪失し、原子炉の冷却機能の主たる設備の電源が失われた場合、非常用ディーゼル発電機が起動を成功させても、原子炉水位は猛烈な速度で冷却材である水を蒸発させるのである。まったく原子炉に給水が行われなければ、5、6分で水位を2メートル40センチ低下させ、原子炉水位がECCS自動起動レベルに達していたとしても、不思議ではない。
4炉とも別々の壊れ方をした福島第一原発の1号機から4号機までが、津波襲来までの小一時間、非常用ディーゼル発電機が起動した事実は外部電源が失われていた事実の裏返しである。所内側遮断器の切替に失敗していれば、非常用電源は交流母線に供給されず、津波襲来前に炉心溶融にいたっていた可能性すら否定できないのである。
フクイチ2号機の外部電源喪失事故は非常用ディーゼル発電機が正常に起動したのにもかかわらず、30分の外部電源喪失中、原子炉水位を二メートル低下させたものであった。全く同様の事故がスウェーデンの原発でも発生しているのだが、22分間で原子炉水位を2メートル低下させるというもので、INESレベル2の事故だと判断された。311の九ヶ月前である2010年6月17日に、奇しくも、ベラルーシでスタクスネットが発見された日に、あわやメルトダウン寸前の事故に見舞われたフクイチ2号機であったが、何もなかったかのようにひと月後再稼動にいたるのであるが、この両国の対応の違いは一体どこにあるのか。日本は世界的にも有数な地震国であるが、スウェーデンは地震国ではない。さらにいえば、そもそも原発プラントは地震を考慮した設計にはなっていない。GEで開発された沸騰水型原子炉は地震が起きない地域で考案、推進されたものである。引き回し配管一つとっても、それは明らかなことである。
TSUNAMIというのは日本語の津波が語源になっている。日本で津波被害を想定しない原発など、最初から沿岸部に建てるべきではないのである。浸水すれば壊れる非常用ディーゼル発電機を地下階に置くことなどあまりに熟慮に欠いた設計である。
福島第一原発事故は311クライシスが引き金となったが、外部電源が喪失していなければ、今あるフクイチの四機は救えていた可能性がある。少なくとも当方は、途方もない未来へ負の遺物を残してしまった責任として、福島第一原発事故の徹底究明が図られるべきだと信じて疑わないし、ならびに311クライシスの九ヶ月前にさかのぼり、フクイチ2号機の外部電源喪失事故の真相究明をもって外部電源が喪失するということがどれだけ脅威であるかをも知ることができると考えている。
想定外の地震が引き金となり、未曾有の巨大津波が襲来したのだ。だから、福島第一原発事故は仕方がないのだ。一応、この先々いろんな所から賠償請求されると思うけれど、想定外の津波だったといえば、国が面倒見ることを定めたのが原子力損害賠償法なのさ♪
未来に全部、押し付けようとしている。
こんなの、ただの、バカである。
311クライシスで襲い掛かった津波は想定外であった。それは当方の目にも明らかで、疑う余地はない。あれは地獄であり、二度と食らいたいなどと誰一人として思うわけがない。(食らわそうと考えている一部を除いて)
だからといって、想定外の津波に託けて、チェルノブイリ事故をはるかに凌駕する千分の一ミリの埃を地球上に拡散する未曾有の原発事故に発展した責任まで押し付けるのはあまりにも論外である。
日本政府の福島第一原発事故への矮小化、過小評価、さらには事故原因の真相究明に後ろ向きな姿勢にほとほと呆れているのである。真相究明、全容解明が今をもって為されない事に憤慨するのである。
原発推進は日本を隷従支配するために仕掛けた戦勝国の工作である。工作員を政府中枢にもぐりこませ日本列島沿岸部に原発建設を推進させ、プロジェクトカニキンを見ても明らかなように、地下核実験の要領で核爆発で人工的に地震を起こす技術を隠していたのである。一国が破綻するにふさわしい想定外の賠償と後始末が未来に遺してしまった福島第一原発事故を二度と繰り返してはならないことは自明の理であり、これ以上、未来への負債を積み上げていかないでほしい。
決断すべきは、営業運転中の原発プラントを直ちに停止し、廃炉にしていくことである。



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