市橋達也の冤罪検証・手記本出版の真の目的は目撃情報の既成事実化
2011/02/07(Mon) 17:12
手記本出版の真の目的は目撃情報の擦り合わせと既成事実化《逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録|市橋 達也》を読了した。読む前の印象は【市橋達也の手記本について】で記した。中でも、最も胡散臭く感じたのは、〈市橋達也くんに適正な裁判を支援する会〉代表である本山教授が手記本の話を何も聞かされていなかったことであった。その部分をちょっと詰めておきたい。
□ 本山教授は手記本出版を知らされていなかった。
当局が隠し持っていた直腸判定の記録により、リンゼイさんの死亡時刻が26日夜と判明したこと―。死亡時刻により、検察の見立てはおろか弁護団の主張まで否定されたこと―。『市橋、容疑を認める』、『市橋全面自供』と騒ぎ立てたはずの供述調書を裁判所に証拠提出していなかった(裁判所が証拠認定しなかった)こと―。リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件は公判前整理手続で何度か重要な局面を迎えたがメディアは一切黙殺していた。
そんな中、先月(2011年1月23日)夜、『市橋達也は無人島で生活していた』と、突如として報じられた。何の前触れもなく大騒ぎしたのでびっくりした。市橋達也の潜伏期間の考察である【市橋達也の冤罪検証・市橋達也が沖縄を目指していなかった場合。】をエントリーしたばかりだったのだから、なおさらだった。手記本が事実なら、小豆島潜伏説は速攻で否定されたということになる・・・。
教授も、今回の手記本出版騒動はまさに寝耳に水であったようだ。まずは、11年1月24日の教授のブログを引いてみる。
2011年1月24
---------------------------------[抜粋]
このところ毎日いろいろなことに追われていて、ブログの更新ができませんでした。昨日の夕方頃から急にテレビで、市橋君が獄中で書いた手記が出版されるというニュースと逃走中に沖縄の島で暮らしていたというニュースが流れ、私のところにもいくつかのメディアから取材の電話がありました。支援者の方々は気になっていることと思いますが、明日は菅野弁護士とお会いすることになっていますので、前回の公判前整理手続の様子や、手記の出版のことや、最近の市橋君の精神的状況など、皆さまにお伝えできると思います。(支援者のお一人から本はすでに発行されたという情報が届きました。ありがとうございました。)
---------------------------------[抜粋了]
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このところ毎日いろいろなことに追われていて、ブログの更新ができませんでした。昨日の夕方頃から急にテレビで、市橋君が獄中で書いた手記が出版されるというニュースと逃走中に沖縄の島で暮らしていたというニュースが流れ、私のところにもいくつかのメディアから取材の電話がありました。支援者の方々は気になっていることと思いますが、明日は菅野弁護士とお会いすることになっていますので、前回の公判前整理手続の様子や、手記の出版のことや、最近の市橋君の精神的状況など、皆さまにお伝えできると思います。(支援者のお一人から本はすでに発行されたという情報が届きました。ありがとうございました。)
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明日弁護士に聞いてくるから待ってくれと困っているご様子だ。最後の()内の一文は、出版は26日だとメディアは盛んに宣伝していたのにも関わらず”すでに出版されている”という支援者の”間違った情報を鵜呑み”にし感謝までしていることからも、市橋達也の手記本出版に際し、全く情報を得ていなかったことがうかがえる。今回の手記本騒動は、当方と同様に、本山教授もびっくりしているご様子だ。次に、翌日11年1月25日の教授のブログを引いてみる。
2011年1月25日
---------------------------------[抜粋]
菅野弁護士の事務所を訪ね、石田弁護士も同席して、一昨日の夕方からテレビで報道された市橋君の手記が出版された経緯を伺ってきました。以前、リンゼイさんのご両親宛の謝罪の手紙がイギリスの新聞に掲載された時も、日英両国で批判を浴びましたので、今回はずい分気を使って慎重に対応されている印象を受けました。元々は、市橋君が民事裁判で被害者遺族から損害賠償を請求された時にご両親(市橋君の)には絶対に迷惑はかけたくないということから、刑務所の中にいて収入を得る方法として本の出版を考えたようです。昨年9月頃に幻冬舎という出版社から手記出版の提案があり、それに弁護団が協力して実現したようです。当初は1月28日にテレビ朝日と週刊新潮がアナウンスし、1月末に出版予定だったのが、あらかじめ警察に連絡をしたら情報が漏れてしまって、一昨日の放送になり、本の発売も早まって明日26日に全国の書店にならぶ予定だそうです。私は一日早く一冊頂いてきました。
[中略]
市橋君の精神状態は、過去には弁護団が接見に訪れた時にかなり不安定(特定の話題について激高する)な時もあったようですが、現在は普通とのことです。市橋君自身は出来あがった本を見ていないそうですが、昨年12月末頃に書きあげて、やりとげたという一種の達成感はあるのではと想像します。事件そのものについて触れていないのは、これから裁判が行われるのだからという弁護団の指示によることのようです。
--------------------------------[抜粋了]
菅野弁護士の事務所を訪ね、石田弁護士も同席して、一昨日の夕方からテレビで報道された市橋君の手記が出版された経緯を伺ってきました。以前、リンゼイさんのご両親宛の謝罪の手紙がイギリスの新聞に掲載された時も、日英両国で批判を浴びましたので、今回はずい分気を使って慎重に対応されている印象を受けました。元々は、市橋君が民事裁判で被害者遺族から損害賠償を請求された時にご両親(市橋君の)には絶対に迷惑はかけたくないということから、刑務所の中にいて収入を得る方法として本の出版を考えたようです。昨年9月頃に幻冬舎という出版社から手記出版の提案があり、それに弁護団が協力して実現したようです。当初は1月28日にテレビ朝日と週刊新潮がアナウンスし、1月末に出版予定だったのが、あらかじめ警察に連絡をしたら情報が漏れてしまって、一昨日の放送になり、本の発売も早まって明日26日に全国の書店にならぶ予定だそうです。私は一日早く一冊頂いてきました。
[中略]
市橋君の精神状態は、過去には弁護団が接見に訪れた時にかなり不安定(特定の話題について激高する)な時もあったようですが、現在は普通とのことです。市橋君自身は出来あがった本を見ていないそうですが、昨年12月末頃に書きあげて、やりとげたという一種の達成感はあるのではと想像します。事件そのものについて触れていないのは、これから裁判が行われるのだからという弁護団の指示によることのようです。
--------------------------------[抜粋了]
弁護士の言葉をそのまま載せているのであろう、昨年9月頃、幻冬舎からすでにオファーが来ていたという。弁護団の弁護費用を拠出する支援の会代表の本山教授が、手記本の話を全く知らなかった。弁護団は三四ヶ月も本山教授に内緒で、幻冬舎と手記本の話を進めていたということだ。〈市橋達也くんに適正な裁判を支援する会〉に送金した支援者に対し、市橋達也の近況や公判前整理手続などの弁護団の弁護活動状況をブログで発信していることを考えれば、これほど重要な情報が教授に欠落していることに、流石に違和感を覚えた。
女性自身のインタビューで、『びっくりしました。テレビのニュースで手記出版を知ったんです。でもすぐに、なにかの考えがあってのことなんだろうと思いましたが。p33』と語っているし、教授のブログエントリーを遡ってみても、手記本出版のことには一切触れられていない。全くをもって蚊帳の外に置かれている。
クリックで拡大。再クリックでとじる。

週刊女性 二月十五号 P33 左の見出しに悪意を感じてしまう。
支援する会代表ですでに260万円を弁護団に貢いでいる本山教授は、自分に内緒で弁護団が手記本出版の話を進めていたことを是としたのだろうか。支援金を教授のもとに送金して、市橋達也の近況を知るべく教授のブログ更新を楽しみにしていた支援者は、拳を振り上げなかったのだろうか。
――― 手記本出版に際し、感じた疑問点―――
■ 本山教授は手記本出版を知らなかった。
市橋の近況や弁護活動をブログで情報発信していた本山教授が、この度の手記本出版騒動では蚊帳の外に置かれている。週刊女性のインタビューでも市橋達也の手記本出版をニュースで知ったとコメントしている。出版の予定すら知らされていなかったのた。すでに250万円を弁護団に提供し、領収書をブログ上で公開している、パトロンたる本山教授に出版日すら知らせないのはおかしい。オファーは9月にあったというから、四ヶ月以上、秘密にしていたのである。手記本出版の話が教授の耳に入らないように箝口令を敷いたか。あるいは教授が無関心なだけか。
■ 病舎では筆具の所持は可能だったのか。
市橋達也はつい最近まで千葉刑務所の病舎にいた。「自殺の恐れがある」と病舎に収容され、「精神的に具合が悪い状態」といちゃもんをつけられ、私物の保管が極めて制限されている。公判前整理手続で処遇改善を裁判官に訴えるほどだ。2010年8月に市橋達也が収容されている千葉県刑務所内病舎で、未決囚が両目を箸で突き刺し死亡する事件が起こっている。目に突き刺せば致命傷を負う筆具の所持が許可されたとは到底思えない。市橋は締め付けがすこぶる厳しく極めて制限されている状況下にあり、はたして筆具の所持は可能だったのかという部分に、そもそもの疑問がある。
■ 執筆作業を急かし過ぎた?
幻冬舎から市橋達也に(実質弁護団に)オファーがあったのは前年九月であった。千葉刑務所拘置施設の病舎に収容されていた市橋達也が一般房(独居)に移されたのは教授のブログでは10月中旬に報告されている。おそらく、私物所持が許される一般房に移ってから手記執筆に取り掛かったのだろう。ともなれば、三ヶ月程度で240ページを書き上げたことになる。いくら回想録とはいえ、240ページとなると素人には難しい分量だ。もっとじっくりと、時間をかけて取り組むべきではなかったか。
■ 市橋達也と直接交渉することはできない。
そもそも接見禁止の市橋達也と直接交渉はできない。接見禁止は起訴されればほとんど解かれるのだが、否認裁判や交渉に使われた場合、初公判まで接見禁止は解かれない。もうひとつ言えば、市橋達也とは手紙でやりとりすることもできない。幻冬舎は市橋達也と交渉したというよりも、弁護団と交渉したともいえる。
■ 市橋達也は出版時、著書を読んでいない。
1月25日の記事で「市橋くんはまだ出来上がった本を見ていない」という部分は見逃せなかった。著者が著作を読む前に世に出ることなどあるのだろうか? 市橋達也は著書をまだ見ていない。下手をすれば市橋は手記本の出版すら知らないのではないだろうか、とさえ訝ってしまう。。
■ 市橋達也の初公判はまだ開かれていない。出版のタイミングがおかしい。
永山則夫、福田和子等、獄中で手記を出し話題をさらった前例はあるが、二人とも刑が確定してからである。市橋達也はまだ公判前整理手続の段階であり、初公判は半年先である。さらにいえば、この手記本騒動は証拠が弱い検察を優位に立たせるものであり、市橋達也にとってプラスになることは何一つもない。被害者遺族への返済に充てたいとしても出版する時期が恐ろしく有りえないのである。否認裁判になれば最高裁まで争うだろうから、せめて第一審の判決後に出版すればいい。今回の手記本出版騒動はあまりにも熟慮に足りなくて、あまりにも拙速すぎるのである。
■ 被害者遺族への謝罪の手紙は、今回の手記本出版騒動の布石である。
被害者遺族への手紙については【市橋達也の冤罪検証・手紙は本当に市橋が書いたのだろうか】で書いた。イギリスメディアにリークした理由が、”被害者遺族に受け取りを拒否され、読んでもらう方法として公開を選んだ”、この一点ですでに意味が分からないのだが、英文だけ渡せば済むのに、和文も添えたのは日本で公開することが前提だとしか説明つかないのではないか。この謝罪の手紙騒動を主導したのは弁護団であり、手記本騒動は弁護団が幻冬舎の窓口になった。完オチ騒動から見れば、弁護団の行動は市橋達也には極めて不利益なことばかりだ。
■ 捜査本部は市橋達也の逃亡期間を解明出来ていなかった。
市橋達也は拘留期限前日に自供したことになっているが、市橋達也が完オチしたと弁護団が騒ぎ立てた供述を裁判所が証拠認定していない以上、黙秘していたことと同じという理解なのだが、逃亡期間の裏付けは、市橋本人が口を割らないかぎり、捜査のしようがなかった。手記本出版の直前になって千葉県警の捜査員が慌てて無人島を捜査したことからも解るように、捜査本部は市橋達也の二年七ヶ月の逃亡期間を解明出来ていなかった。
■ 手記本の真の目的は目撃情報の既成事実化。
市橋達也逮捕の五日前、突如として市橋達也の整形写真が公開された。『ホクロのない顔写真』である。名古屋で撮られた顔写真を医大に鑑定を回し市橋本人だと断定している。以降の福岡などの目撃情報も市橋達也本人だと断定した。大阪で潜伏していたと指紋照合が一致したとも報じられた。目撃情報の日時に市橋達也がそこにいなければおかしいわけだ。手記本は見事に名古屋、博多、神戸、大阪の市橋の目撃情報と整合性をあわせている。
■ せめて有罪を確固たるものにするために。
この事件は裁判所が証拠認定した供述調書もなければ、殺人で逮捕状が取られなかったことからもわかるように物証に弱い。どうにか追起訴することはできたが、裁判員裁判でどう転ぶかわからない。有罪の裁定を確固なものにするために、説得力のある物証(のようなもの)が必要だ。架空の物証=心象をすり込んだという点で、謝罪の手紙騒動も手記本騒動も通底する。捜査当局が証明できなかった二年七ヶ月の逃亡期間、その穴を埋める役目を十分に果たしていることを指摘しておきたい。
***
捜査本部は市橋達也の二年七ヶ月を解明できなかった。
勾留満期前日まで市橋達也が黙秘していたので、捜査すらできなかった。
市橋達也が事件発覚から二年七ヶ月もの長きに渡って姿を暗ませていたのは事実である。
だが、この二年七ヶ月の逃亡期間を裏付けていかない限り、
「殺人という大罪から逃れるために逃亡した」ことは既成事実化されない。
完オチしたはずの供述調書を裁判所が証拠認定しなかったことを考えれば、
二年七ヶ月の逃亡は犯意を立証する有力な状況証拠といっていい。
市橋の逃亡の裏付け捜査はされず、検察も弁護団も忌避してさえ見えた。
市橋達也の大阪の元同僚は法廷で証言しないだろう。
市橋達也を働かせていた建築会社は徹底的に仕事を切られ倒産したときく。
名古屋で市橋達也の顔写真を撮影した整形医は法廷で証言しないだろう。
そもそも市橋達也の左頬にある縦に並んだ2つのほくろは除去されていない。
ホクロの除去痕を不審に思ったという時点で通報した根拠が破綻している。
名古屋、福岡、神戸、大阪、市橋達也は全国各地で目撃され、本人だと断定された。
それらは本当に市橋達也だったのだろうか。
なぜ、捜査本部は二年七ヶ月の逃亡期間の裏付け捜査が満足にできなかったのだろうか。
捜査本部は裏付け捜査ができない事情があったのではないだろうか。
裏付け捜査がなされなくても、手記本の中で目撃情報は既成事実化されている。
一番損したのは、間違いなく市橋達也であるが、
この手記本騒動で得をするのは一体誰だろうか。
・・・
市橋達也は法廷に立てるのだろうか。
生きて裁判を受けられるのであろうか。
薬漬けにされて廃人にされやしないだろうか。
自殺を偽装し、殺されやしないだろうか。
今回の手記本に際し、真っ先に市橋達也の身を案じた。
捜査本部は市橋達也が絶食していると嘯いて、食事を抜き続けた。
市橋が餓死したらしたで、自殺と片付けようとした。
「黙っている方が悪いんだよ」―虫けら一匹殺した程度にしか、ヤツラは思わない。
弁護団が自供をでっちあげるなんてあり得るのだろうか。
被害者の謝罪の手紙を捏造するなどあり得るのだろうか。
本を一冊でっちあげるなんて、本当にあり得るのだろうか。
ただ、
市橋達也が死に、法廷に立たない前提下か、
市橋達也が罪状認否で全面的に認める確約があれば、
十分に考えられることである。
死んでしまえば、『死人に口なし』で、罪を認めたなら一生獄中に閉じ込めておけると画策する。
こんなデタラメに騙されるなよ、と、一言だけいっておく。
そして、官憲メディアはここまでする、ということだけ知っておいてもらいたい。
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2015/12/21(Mon)01:20
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