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フクイチ事故の核燃料デブリは未だに誰も見ていない。

2012/10/26/(Fri) 19:36

デブリ - Wikipedia


311クライシスが引き金になった福島第一原発事故。あれからもう一年半以上が経過した。スリーマイル島原発事故。チェルノブイリ原発事故。過去の大きな原発事故の例にならえば、これから先、福島第一原発事故の後始末には途方も無い時間と金が注ぎ込まれることになる。

日本政府(現野田政権)が”冷温停止状態”という新造語をぶち上げ、フクイチ事故の収束を宣言したのは昨年末であった。事故収束にむけてのロードマップにあるステップ2が達成できたことが事故収束という判断につながったようだ。



ステップ2の達成というのは、『放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている』状態であり、つまり、これ以上は事故による被害は拡散しないという判断である。このことをもって『事故収束』につなげるかどうかには大きな疑問がある。

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先日も、日本列島に54基も原発時限爆弾を仕掛けた自民党の総裁になった安倍晋三が初めてフクイチを訪れ、1号機から4号機までをバスの中から間近で見て、「事故収束したとは言えない状況だ」とコメントした。

福島第1原発を視察=「事故収束とは言えない」―自民・安倍総裁 via The Wall Street Journal 日本版 –
http://lucian.uchicago.edu/blogs/atomicage/2012/10/03/ldp-abe-the-acciden-has-not-ended-in-fukushima/

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(フクイチ見てきたけどバスから降りなかったよ。だって危ないじゃん。)


事故は収束したか否かを問う前に、福島第一原発事故で1号機から4号機までの原発プラント4基が救いようのない穀潰しと化したのは事実である。そして、事故炉の廃炉に向けて、どうしても克服しなければならない問題がある。核燃料デブリの回収作業である。事故収束に向けてのロードマップの中期的な課題の部分である。

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核燃料デブリは、メルトダウンして溶け落ちた核燃料である。圧力容器内にとどまっているかもしれないし、厚さ10センチ以上のステンレス鋼を突き破って格納容器内に溶け落ちているかもしれない。チャイナ・シンドロームが起こっているかもしれない。スリーマイル島原発事故では、制御棒駆動装置の一つからスコープを入れて調査するまでに3年の月日を費やした。そして、核燃料デブリを回収するべく、圧力容器の上蓋を外すのに、さらに2年を費やした。ここまでで5年。さらに核燃料デブリを99%回収するまでに5年を費やした。

スリーマイル島原発事故から30年ほか(1)
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/c888624147fc5f5e33bf2d353c961140

チェルノブイリ原発事故に至っては、爆発した原子炉建屋を覆う石棺の老朽化が深刻で、石棺そのものを覆うアーチ型の巨大な鉄製カバーを建設中である。石棺自体は、原子炉建屋から放射能が漏れ出さないよう対処されたものであったし、無論、石棺で覆ったからといって事故収束したとは到底言えるものではなかった。チェルノブイリ原発事故は『2025年から、4号機の解体と使用済み核燃料の取り出しを本格的に開始する予定』である。つまり、事故から40年経ってようやく本格的な収束作業に取り組むことになる。

チェルノブイリ、石棺覆う起工式 耐用百年の巨大アーチ - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012042601001850.html

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スリーマイル島原発事故では核燃料デブリの回収に10年を費やした。チェルノブイリ原発事故では爆発直後に原子炉建屋ごと蓋をして放射能の拡散を防いだわけだが、炉内の核燃料デブリは未だに回収されず、2025年に回収開始が予定されている。事故から40年後である。核燃料デブリが回収されなければ廃炉も解体もできない。それは言わずもがなであるが、原発事故の収束とはないか。その事を考えさせられるようだ。


先般、1号機の原子炉建屋内格納容器の内部は毎時10シーベルトが検測されている。同じ調査で、実は毎時10万シーベルトというとんでもない数値が検測されていたことについては以前、記事に書いた。福島第一原発1号機で計測された最大線量は毎時10シーベルトではなく、本当は毎時10万シーベルトである。 2号機の格納容器内に至っては、なんと、毎時73シーベルトである。毎分約1シーベルト。放射線治療で局部に浴びせる放射線量は1シーベルトという。つまり、2号機の格納容器内はたった1分、そこにいれば、脱毛するほど被曝してしまうということになる。これほどまでの高線量は、核燃料デブリが再臨界していないのが事実であれば、2号機格納容器内は相当量の放射能で汚染されているということになる。

http://photo.tepco.co.jp/date/2012/201209-j/120911-27j.html
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120911_264.jpg
2011年3月23日に撮影された2号機地下電源室内。拡大してもらえばわかるが、無数のノイズが写り込んでいる。つまり2号機の原子炉建屋内は相当な汚染状態にあるということだ。


1分、そこにいただけで、がんの放射線治療と同等の線量を浴びるってどんだけ?って普通の感覚では思うはずだ。実際に、フクイチ2号機原子炉建屋格納容器内の毎時73シーベルトというとんでもない数値が計測されている以上、作業員は中に入って作業することはできない。人が中に入って作業することすらできないのに、収束宣言もへったくれもないのである。現に、1号機、2号機、3号機の原子炉建屋内での収束作業は無線操縦ロボットによる調査がメイン(4号機の原子炉建屋は例外)である。ついこの間も3号機原子炉建屋地下階を調査中の無人ロボットが操縦不能になり、回収できなくなったばかりであったし、3号機使用済み核燃料プールのがれき処理中に鉄骨をプール内に滑らせたと報じられたが、そもそもが無人操縦なのであり、プール周囲に乱雑に積み重なる鉄骨やガレキを崩さずに撤去するといった非常にデリケートな作業を人手を介さず遠隔操作で行なっていたからであって、あまりにも分かりきった結果であった。

最近、ふくいちライブカメラの4号機側からのアングルに設置変更されたのだが、朝7時から、タイベックスを着込んだ幾人もの作業員が忙しなく動きまわっている。4号機の核燃料取り出しに向けた準備作業であろう。このアングルは、フクイチ事故が着実に収束に向かっているという認識を与えるかもしれないが、実のところ、無人ロボットによる調査ばかりで収束作業といえる状態とはいえない1号機、2号機、3号機の後ろ向きな進捗状況から目を背けさせるためのパフォーマンス的な意味合いがあるのではないかと勘ぐってしまう。



人類は、原子炉の圧力容器を突き破った核燃料デブリを回収する技術も知恵も有していない。スリーマイル島原発事故では核燃料デブリはかろうじて圧力容器内にとどまっていた。それでも取り出すのに事故から10年がかかった。チェルノブイリ原発事故では未だに手付かずのまま放置されている。フクイチ事故の収束に向けてのロードマップの中で中期的課題に含まれている核燃料デブリの回収作業であるが、格納容器に溶け落ちて固まった核燃料デブリの回収技術が確立されていないから、先延ばしにしているだけである。この、未来に解決策が生み出されているだろう的な原子力業界特有の思い込みは、倫理的に問題があると思う。回収した核燃料デブリをどこで保管、管理するかという問題も克服する必要がある。最終処分場の問題ともつながってくる。原発は罠だった。騙されていたんだ。そう反省していち早く原子力産業から手を切らなければいけない。無論、再稼働などは、論外である。


原爆を落とした側が地震ですぐに壊れる原発爆弾装置を仕掛けていった。

原発再稼働に大義はない。
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Category:福島第一原発事故

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子供たちは、未来はどうなるのか。知ってるんだろ?

2012/10/07/(Sun) 21:53





ETV シリーズ チェルノブイリ原発事故・
汚染地帯からの報告
「第2回 ウクライナは訴える」
http://www.dailymotion.com/video/xttxzo_etvyyyyyyy-yyyyyyyyyyyy-yyyyyyyyy_news

ETV特集シリーズ_チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 投稿者 gomizeromirai
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/0923.html


そして今、もっとも危惧されているのが子供達です。
事故の後で生まれ、汚染地域で育った子供達。
報告書によれば、その78%に慢性疾患がみられるといわれます。
「7年生の時から時々意識を失います。高血圧で上が160です。」
「生まれつき慢性気管支炎です。それに朝起きてすぐは関節が痛いです。」
しかし、国際機関は甲状腺癌などわずかな病気しか放射線の影響と認めず、ウクライナ政府の主張を受け入れていません。
「私達現場の医師達は甲状腺癌だけではなく、他の疾患もチェルノブイリの影響かもしれないと思っています。」
原発事故の後、人々の健康に何がおきているのか。
ウクライナの訴えです。

シリーズ
チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告
第2回 ウクライナは訴える

チェルノブイリ原発事故がおきたのは4月、新緑の季節でした。
ウクライナには、ヨーロッパでもっとも肥沃といわれる穀倉地帯がひろがっています。
事故の後も、汚染地帯には、およそ500万人が暮らしてきました。
「これが黒土よ」
「この土地が私達を養ってくれているのよ」
「小麦が育ったら緑できれいになるわ」
「でも みんな病気をしていいる」
「がんで 若い人も年寄りも 死んでいくわ」

事故の後、数年間は汚染に関する詳しい情報は与えられませんでした。
人々は、放射線が病気を引き起こすのではないかという不安の中で暮らしてきました。

キエフ国際科学会議
2011年4月

去年4月
チェルノブイリ事故25年を際して、ウクライナで開かれた国際会議。
その会議の席上、ウクライナ政府は、一冊の報告書を公表しました。

25years
after Choronobyl Accident
SAFETY FOR THE FUTURE
National Reoport of Ukraine

ウクライナ政府報告書
未来のための安全

未来のための安全と題したウクライナ政府の報告書です。
チェルノブイリ原発の現状や
事故がもたらした様々な影響がまとめられています。

中でも、もっとも多くのページが割かれたのが
住民健康に関する部分でした。

25年にわたって汚染地帯の住民を見続けてきた医師達
35人によって執筆されました

現場の医師達がみてきた汚染地帯の人々の健康状態は
どのようなものだったの(だ)

キエフ

首都キエフに
その情報を取りまとめている
国の機関があります

国立記録センター

被災者の情報を一括管理する巨大データベース国立記録センターです
1.事故処理作業者 2.避難民 3.汚染地帯の住民 4.1~3の子供

被災者の情報が4つのカテゴリーに分類され、集められています
現時点で236万4538人が登録されています

これは この被災者が 検査機関にきた日付です

継続コードとカルテ番号です
ここは 患者の名前と生年月日です

これは その被災者が 検査機関にきた日付です
病院コードとカルテ番号です
ここは 患者の名前と生年月日です
病名と既往歴です

236万人の健康状態と被爆との関係を
ウクライナ政府は検討しました

こうしてつくられたウクライナ政府報告書は
一つの注目すべき問題提起をしています

多くの被災者が心筋梗塞や脳血管障害など様々な慢性疾患を発症しているという訴えでした

しかし、IAEAなど国際機関の見解では、
科学的には、こうした病気は原発事故による放射線の影響であるとは認められないとしています

ウクライナ政府報告書
白血病
白内障
小児甲状腺がん
心筋梗塞
狭心症
脳血管障害
気管支炎 など

国連科学委員会
白血病
白内障
小児甲状腺がん

ウクライナ政府報告書と国連で被爆の影響を評価する国連科学委員会との見解の相違です
報告書が放射線との関係がある病気を多く明記するのに対し
国連科学委員会は事故直後に原発で働いていた人の白血病と白内障
汚染されたミルクを飲んだ子供におきた甲状腺がんのみを指摘しています

なぜウクライナは国際社会が科学的には認められないとした病気まで原発の影響だと訴えることにしたのか

ウクライナ非常事態省
非常事態省 立入禁止区域管理庁
ウラジーミル・ホローシャ長官

ウクライナ非常事態省で長官を務める
報告書の責任者
ホローシャさんです

確かに政府報告書の内容は
国際的にコンセンサスが
とれていないものもあります
しかし私たちは このような事実が
あることを 黙っていられません
科学者は公開すべきと思っています
そして私たちは
発表すべきだと思っています

報告書は、心臓や血管の病気の増加に注目しています

心臓や血管の病気
(循環器系疾患)
腫瘍以外の病気による死亡

原発近くからの避難民の死因です
がんなど腫瘍以外の死因の実に9(89%)割を心臓や血管の病気がしめていると報告しています

ウクライナ国立放射線医学研究所

国立放射線医学研究所
ウクライナでの研究の中心です

報告書を執筆した医師の多くがここに所属しています

放射線医学研究所
ウラジーミル・ブズノフさん

執筆者の一人
心臓や血管の病気を担当したブズノフさんです

冠動脈疾患
(心筋梗塞・狭心症)

例えば、心筋梗塞や狭心症については甲状腺透過線量で0.3Sv~2Sv被爆した避難民は被爆の少ない人の3.22倍発祥しやすく、それ以上被爆した人は、4.38倍発祥しやすいとはじき出しています。

これまで国際的には心理的ストレスや社会的な影響とされてきた病気です。

私は「放射線の影響」と よく言われる
「心理的・社会的ストレスの影響」とを
比較する研究を始めたばかりですが
これまでの蓄積から言えば
この二つの影響はほぼ同じだと思っています
低い線量の放射線の影響が
現れていると言えるのは
心臓や血管の病気です

ウクライナ政府報告書の分析の対象となっている汚染地帯、原発から140キロの街を訪ねました。
コロステンは人口6万5千人、ウクライナ北部の街です。

現在ウクライナ政府は被災地を被爆線量におうじて4つのゾーンにわけています。

人々が避難や移住をしたのは赤とオレンジで表されたゾーンからです。
年間の線量が5mSv以上とされた地域です。
その外側にある黄色と青のゾーンは年間線量が5mSv以下とされ、事故の後も住民が住み続けています。
コロステンは移住勧告地域と放射線管理地域が混在する場所にあります。
報告書によるとコロステンを含むジトーミル州住民は移住勧告地域で原発事故から25年の間の積算で平均26mSv。
放射線管理地域では、平均15mSvの線量を被爆したとされています。

コロステン検診センターは
事故から5年後の1991年住民の健康状態を検査するためにつくられました。

周辺の街や村から毎日4、50人の住民が訪れます。
内部放射線量を知るために
体内の放射線量をはかるホールボディーカウンター
20年前に比べると住民の内部被ばくは大幅に減りました。
しかし、住民の健康状態は、事故前に比べて悪化しているといいます。

医師
アレクセイ・ザイエツさん

およそ、半世紀にわたり、住民の健康状態を見続けてきた
医師のザイエツさんです

サイエツさんの診察結果も国立記録センターに送られ分析の対象となってきました
ザイエツさんのもとには心臓の不調を訴える住民が頻繁に訪れます

ワシーリー・ブロンコフスキーさん

その一人ワシーリーさんです

あなたは手術をなさいましたが
その後 体調はいかがですか?

はい 問題があります
熱が上がりました

事故直後から徐々に体調が悪化してきましたが
去年心筋梗塞で倒れました

ワシーリーさんのように
事故の後、心疾患をはじめ、様々な病気を抱える住民が増えているのは
食べ物による内部被ばくの影響によるものだと
ザイエツさんは考えています

私たち現場の医師たちは
甲状腺がんだけではなく
他のさまざまな疾患も
チェルノブイリの影響かもしれないと思っています
現在は 低い線量の放射線の影響を
立証することは難しいと思っていますが

主な原因はミルク そして肉だと
私は思っています

最も危険なのは森で採れるもの
キノコやベリー類です
これらは8割方 基準を超えています

しかし人々は
それを採って食べています

コロステンの市場です
地元で採れた農産物がならんでいます

しかし、キノコやベリーなど汚染の可能性が高いものは
販売が禁止されています
市場で手に入るすべての食品は
厳しい検査を経て販売されています

市場に併設されている検査所です
まめに含まれる放射線の基準は
1kgあたり50Bq以下です。

お名前は?
ザレツキーです
このまめは18ベクレルです

ここで基準を超える食品が最後に見つかったのは
4年です
しかし
コロステンの人々が食品を手に入れる場所は市場だけではありません

心臓の不調を訴えていたワシーリーさんです
原発事故の時には32歳
学生時代、バレーボールの選手でした
コロステンにある工場の管理部門で働いてきました
現在58歳
原発の事故処理作業など
強い放射線をあびた経験は一度もありません

ワシーリーさんの奥さんが
普段食べているものを見せてくれました
自分たちで採った森のキノコ
そして自家菜園で採れた野菜
コロステンの人達は昔からこうして自給自足に近い生活をおくってきました

このキノコは コロステンから
25キロ離れた森で採りました

ハッキリ言って 私たちは夏は
このキノコやベリーで生きながらえているのよ

給料も無いし 年金で暮らしていくには
それしかないでしょ

コロステンでは安全な食品を買うための補助金がでますが
一人当たり月120円にすぎません

ワシーリーさんは心筋梗塞をきっかけに35年勤めた会社を辞めました
現在被災者の治療費は国の全額負担ですが
薬代は自己負担
年金暮らしの家計を圧迫しています

ワシーリー・ブロンコフスキーさん
私たちは移住するつもりで
書類を集めました

しかし 新しい場所には
私たちを知る人は誰もいません

そして 家や仕事も無しで いちから
生活をはじめるのは大変だと思ったのです

そして私たちは
この汚染された土地に住み続け

放射線を受け続けてきたのです

ウクライナ政府報告書では
比較的低い放射線量の被ばくと心疾患の発症にも関係があるとしています

虚血性心疾患
(心筋梗塞・狭心症など)
それによると心筋梗塞や狭心症については
50mSvから99mSVまでの
被ばくをした人は被ばくの少ない人と比較して
1.3倍発祥しやすいとしています

報告書を執筆した
ブズノフさんは
コロステンにおおい心疾患の原因も放射線によるものだと考えています

放射線医学研究所
ウラジミール・ブズノフさん

心臓や血管の病気の
増加がみられるのは

1986年と1987年に
事故処理にあたった作業員や

原発30キロ圏内から
避難した人々だけではなく

コロステンを含む
汚染地帯に住み続けている

事故当時 成人だった住民です

セシウムは
あらゆる身体組織に蓄積します

肝臓 胃 ひ臓
そしてもちろん 血管です

心疾患の他にも
報告書は様々な病気について
放射線の影響を分析しています

その一つが
白内障などの目の病気です

白内障については
比較的低い線量の放射線との関係を指摘しています

WHO世界保健機関の報告書によれば
白内障は積算250mSv未満ではその増加は確認できないとされています。

この見解にウクライナ政府報告書は異を唱えています。

放射線医学研究所
ベベル・フェデリコさん

白内障について執筆した
フェデリコさんです

臨床医として治療に携わる傍ら
被災地で住民の目の分析を続けてきた研究者です

力を入れてきたのが
白内障の発祥と被ばくとの関係を調べる研究です

白内障発祥の増加率と被爆線量の関係を表したグラフです
WHOが増加を確認できないとしていた250mSv以下でも
被爆線量と白内障の増加には関係があるという結果です

病気が存在することは事実なんです
このことを公開しようと思いました

しかし ヨーロッパの医学雑誌は
こういいました

「これは確かに面白いが認めるが
限られた人しか興味をもたないことだ」

だから発表されませんでした

放射線の問題に向き合っていない国は
興味が無いんですよ

私の主張が認められなくても
仕方がないかもしれません

しかし遅かれ早かれ この事実そのものが
それが存在すると認めさせていくでしょう

様々な病気と被ばくとの関係を主張するウクライナの報告を
国際機関はなぜ
受け入れないのか

その理由について
国連科学委員会の委員の一人は
取材に対して

放射線と病気の因果関係の証明方法が
我々の基準を満たしていない

と回答しました

国連科学委員会の
2008年の報告所では
ウクライナからの
心疾患に関する報告の問題点をあげています

被爆線量が分かっている被災者がデータ全体の40%しかいないため結論に偏りが生じる可能性があるなどと指摘
ウクライナの報告は科学的に証明されたものではないとしています

国際機関
「被災者の被爆線量データ」が必要
因果関係を解明するための疫学調査

被災者の正確な被爆線量のデータが必要だとする国際機関
病気が放射線の影響であると認められるには
その因果関係を解明するための正確な疫学的調査が必要だとしているからです

しかし
国際機関が求めている疫学的な調査で因果関係を証明するには
事実上不可能に近い

原発事故被災地の専門家たちは
反論しています

被災地の専門家
「被災者の被爆線量データ」は入手困難

それは国際機関が求める
被災者の正確な被爆線量のデータが、そもそも入手が極めて困難であると
考えられているからです


その理由の一つ

白血病の死者数など
公衆衛生に関わるデータが
事故直後から3年以上にわたって
ソビエト政府によって隠されてきたこと

放射性物質はまだらにばらまかれており
その影響を見積もることが難しいこと

そして
汚染地域から移住した
数多くの住民の健康状態の把握の難しいこと

をあげています

国際機関が求める
疫学的調査に必要なデータは極めて集めにくいとの主張

国際機関が原発事故が原因と認めている数少ない病気の一つに
甲状腺がんがあります

なぜ
甲状腺がんは国際的に認められたのか
そこには一つの理由がありました

事故から5年が過ぎても
IAEAなど国際機関は
原発事故収拾に携わった人達をのぞいては
被災地域で発生していた
健康状態の悪化と事故との関係を認めていませんでした

しかし
現地の医師は
早い時期から甲状腺がんの増加に気づいていました

内分泌代謝研究所
ワレリー・テレシェンコさん

ウクライナ政府報告書の
甲状腺がんの項目を執筆した
テレシェンコさんです

私たちの研究所の所長が
1989年にはウクライナやベラルーシで

甲状腺がんの増加が
見られるようになったと報告したとき

IAEAやソビエトの科学アカデミーは
こう言いました

「超音波診断の精度が上がったから
発見数が増えただけだ」

そのように言ったのです

THE INTERNATIONAL
CHERNOBYL PROJECT
TECHNICAL REPORT

事故から5年後の1991年
IAEAは
チェルノブイリ原発事故被災者の健康状態について
調査した結果を発表しました

報告書では
放射線が健康に影響を及ぼした証拠は存在しない
と結論づけています

これに対して
ウクライナなど被災地域の医師たちが
疑問の声を上げます

海外からの支援を受け
因果関係の証明に乗り出しましたが
正確な被爆線量は分かりませんでした

しかし
被爆した放射線量が分からなくても
甲状腺がんならば
因果関係が証明できると
気づきます

着目したのは
ある放射性物質の
性質です

放射性ヨウ素

甲状腺に集まり被ばくを引き起す放射性ヨウ素は
半減期がおよそ8日
事故から数ヶ月でほとんど消えてしまいます

もし
甲状腺がんがヨウ素の影響でおきるのなら
事故前や事故直後に生まれた子供は
被ばくによって
発病数は増え
事故から数ヶ月以上たって生まれた子供は
発病しないはずです

被爆線量ではなく
生まれた時期によって因果関係を探る
この方法
データが蓄積され
事故から数ヶ月以上がたって生まれた子供の発病は
ほとんどないことが
明らかになりました

被ばくと甲状腺がん増加の因果関係が
科学的に証明されたのです

有意な増加

1996年
IAEAは
甲状腺がんを放射線の影響と認めました

ウクライナの医師が患者の増加に気づいてから
7年が経っていました

報告書の責任者
ホローシャさんは
今なお
汚染地帯でおきている
様々な病気と
原発事故との関係が
いつか科学的に証明されると
期待しています


ウクライナ非常事態省

非常事態省 立入禁止区域管理庁長官
ウラジーミル・ホローシャさん

甲状腺がんがチェルノブイリの影響によると
国際機関はすぐには認めませんでした

しかし 長い時間を経て認めました

ですから ウクライナなど被災国の
研究者たちがあげている他の病気も

遅かれはやかれ
国際的な承認がえられると思っています

原発事故によって発病が増加することが国際的に認められた
甲状腺がん

コロステン検診センター

原発事故から26年を経ても
ウクライナは甲状腺がんに悩まされています

大人の甲状腺がんの発症数が増え続けているのです
甲状腺に異常を持つ人が
今になって
次々に甲状腺がんを発病しています

エレーナ・パシンスカヤさん

エレーナさんです

事故当時20歳だったエレーナさんは
3年後この病院で
甲状腺に腫瘍があると診断されました
幸い癌ではありませんでしたが
今でも
ガンになることを恐れ
ここで診察を受けています

これはしこりの検査結果です

ちょっとちいさくなっていますね

次回は組織を採取して調べてみましょう

エレーナさんは
夫と娘二人
家族4人で暮らしています

長く料理人をしてきましたが
少しずつ体調が悪化し
最近、仕事を辞めました

3年前ほどから
入退院を繰り返す日々です

私は しこりが見つかって以来
甲状腺を検査し続けています

がんには ならないかもしれないけど
観察しなければなりません

(事故5日後の)5月1日は
メーデーの行進がおこなわれました

そこで 私たちが
デモの警備に当たらせられました

当時情報があったら こんな不幸は
おきていなかったかもしれません

今は最悪の事態を想定し そうなっても
乗越えられるようにしています

被災地の甲状腺がん患者の治療に当たってきた
国立内分泌代謝研究所

事故の3年後に
甲状腺がんと原発事故の関係を主張したテレシャンコさんです

内分泌代謝研究所
ワレリー・テレシェンコさん

今も多くの患者の治療に当たっています

事故当時10代だったこの女性は
今年甲状腺がんになりました
子供の時の被ばくが引き起す甲状腺がんが
今頃になって発祥するケースが
汚染地帯の全域で増え続けているといいます

チェルノブイリから放出されたヨウ素は
爆発から2か月後には ほとんどなくなりました

それ以降
甲状腺には影響を与えてはいません

子供にも大人にも影響を与えなくなり
ゼロまで減ったのです

しかし実は 病気の発症数は上昇しています

つまり1986年事故当時の影響が
現在も続いているということです

事故当時14歳以下だった被災地の子供が
その後いつ甲状腺がんを発症したか
その人数を表したグラフです

1989年以来
年が経つにつれて
甲状腺がんを発症する人が増え続けています

事故直後の放射性ヨウ素が
いったいなぜ今頃発祥を促すのか

被爆した線量によると考えられます

被爆線量が高かった子供は
早い時期に甲状腺がんになりました

被爆線量が低かった子供は
後になって甲状腺がんになると考えられます

しかも誰も
このような状況が生まれた原因について
確かな説明ができていません

ウクライナ非常事態省
コロステン支部

ウクライナ政府が本格的に放射能対策に取組みはじめたのは
ソビエトから独立した後でした

非常事態省のコロステン支部には
事故後の汚染状況を調べた地図が残されていました

非常事態省コロステン支部
オレグ・ボシャゴフさん


これはセシウム137の汚染地図です
1992年につくられました

汚染地図をつくってみると
線量にばらつきがあることが分かりました
最も濃いピンク色は
年間被ばく線量
5mSv以上の場所です

濃いピンク
年間5mSv以上(強制移住地域と同等)

汚染が少ないはずのこの街に現れたホットスポット
除染はピンク色の場所から順にすすめられることになりました

除染作業自体は事故直後からおこなわれてきました
しかし、その効果は薄く
街の人々は想像もしなかたったほどの汚染にさらされていたのです

そこで
ホットスポットに近い民家8500戸の正確な線量の測定が行われました
一件、一件の見取り図をつくり
一件当たり、およそ10ヶ所の線量を量ったのです

福島で事故の後おこなわれた家屋の線量調査よりも
緻密な測定方法です
そして汚染レベルの高い家は
洗浄だけではない徹底した除染がおこなわれました

裏庭
建物
前庭

最初に屋根を吹き替えます
次は軒先です

そして 強く汚染された土を取り除きます
取り除いたらコンクリートで固めます

ここは屋根から水が落ちて汚染されています
だからコンクリートを敷いたのです

5年間で4000戸の除染に
1億ドル
当時の為替レートでおよそ120億円が
費やされました
一戸あたりおよそ
300百万円
当時GDPが日本の1%程度だった
ウクライナにとって
重い負担でした

しかし
除染をはじめて
5年後の
1997年
経済危機がウクライナをおそい
除染事業は中断を余儀なくされます
目標の半分以上の民家と森林
そして農地などは除染されないまま残されました

非常事態省のボシャコフさんは
今も多くの場所が除染されないままになっていることが
気がかりです

非常事態省 コロステン支部
オレグ・ボシャコフさん

もちろん心配です
ここにはコロステンの住民が住んでいます

ここを人々は歩き回り
子供たちは走っています

1990年代に
やらねばならなかったことです

今ウクライナで最も危惧されているのは
事故の後に生まれ 汚染地帯で育った子供の健康です

ウクライナ政府報告書も
子供の健康悪化について
多くのページを割いています

子どもたち

コロステンの学校です
日本の小学校から高校にあたる年齢の
子どもが通います

事故の後
生徒の健康状態が悪化

体力のない生徒が増えました
3月の健康診断では
甲状腺などの
内分泌疾患が生徒の48%から
そして
脊椎が曲がっているなど
骨格の異常が22%から
みつかりました


内分泌疾患・・・48%
骨格の異常・・・22%

そのため
全校生徒480名のうち
正規の体育の授業を受けられるのが45人
他の生徒は軽い運動しかできません

7年生のときから時々意識を失います
高血圧で上が160です
学校から救急車で
病院に運ばれたこともあります

生まれつき慢性気管支炎です
それと 朝起きてすぐは関節が痛いです
特に足の関節が痛いです

めまいとジストニアがあります
体育の時具合が悪いこともあります

国は対策として
汚染地帯すべての対策として
低学年では10分間
高額年では5分間
授業を短縮することを決めました
それにくわえ
8年生までは
すべての学力テストを取りやめました
試験勉強で具合を悪くし
欠席する生徒が続出したからです

8年生の担任教師

試験があれば子どもたちの
知識も増えると思いますが

本当に子どもたちの
学力や健康が不安です

子どもたちはこの国の未来です
国家は国民の健康を願うものです

最近 生徒の訴えで多いのは 心臓の痛み
保健室にはそれを抑える薬が常備されています

心臓の薬です

養護教諭

血圧を測り 脈をみます
それで判断します

救急車を呼ぶときはありますか?

多い日は 一日3回呼ぶこともあります

ウクライナ政府報告書は
汚染地帯住民など
被爆した人から生まれた
32万人を調べ
健康状態を報告しています

1992年
子どもの22%が健康でした

ところが
2008年
それが6%に減少しました

逆に慢性疾患を持つ子どもは
20%から78%に増加しました

将来国を支える子どもたちの健康を守るため
国も地域も努力しています

給食用の食材は
放射性物質の混入を恐れ
すべて検査をしてから
使用しています

しかし 健康状態の悪化を食い止めることはできません

報告書で
子どもの健康状態について
執筆した
国立放射線医学研究所の
ステパーノバさん

放射性医学研究所
エフゲーニャ・ステパーノバさん

汚染地域全域で
子どもたちの病気が増え続けているのは
統計的にも
明らかであると主張続けています

原発事故被災者の子どものうち
病気を持つ割合は

内分泌系疾患:11.61倍
筋骨格系疾患:5.34倍
消化器系疾患:5.00倍
循環器系疾患:3.75倍

に増加したといいます

ただし子どもたちの健康悪化の原因には
不明な点が多いと
ステパーノバさんはいいます

慢性的に身体に入ってくるセシウム
これに 良質の食品やビタミンの不足が
汚染地帯の子どもたちの健康が
低下している原因だと思います
しかし この研究はまだこれからです

キエフにある国立放射線医学研究所の
小児病棟です
ウクライナ全土から病気にかかった子どもが入院しています
ステパーノバさんは
こうした子どもたちを対象として
さらなる研究を続けていくことにしています

去年
ウクライナが政府報告書を発表したのと同じ頃
福島第一原発で事故が起きました

福島第一原発事故
2011年3月

4月22日
国は
一般人が居住し続けてよいとする
被爆線量の上限を年間
20mSvと定めました

しかし
この基準は高すぎるという
不信の声も上がりました

低線量被爆のリスク管理に関する
ワーキンググループ

政府は去年11月
有識者による
検討の場を設けます

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキングループです
ワーキンググループの目的の一つのは
この20mSvという数値が妥当がどうか評価することにありました

ここで注目されたのが
チェルノブイリ原発事故から
25年経った
ウクライナの状況でした

独協医科大学
木村真三准教授

汚染地帯に足しげく通う
科学者が
ウクライナでの健康状態の悪化を報告しました

しかし
この時
健康の悪化と被ばくの因果関係をめぐり
議論はするどく対立しました

私から言えるのは 私は現実を見る
現実を実際に
チェルノブイリでも福島でも
実は現実を見る限りですが

客観的に

(客観的に)

(何が起こったかということ
25年たって)

25年経って 明らかに病気
それもがん以外の病気が増加傾向にある

(ちょっと今こう ワーキンググループは
科学的に何が起こるか)

長崎大学
長りゅう重信名誉教授
ワーキンググループ

(本当に何が起こるかということを
議論したいものですから)

(ひとつひとつの事情をみていくと
科学的に認められたのは
いわゆる甲状腺のがんで
それ以外は科学的には認められなかった)

ワーキンググループの多くの委員は
小児甲状腺がん以外の病気の増加と被ばくの因果関係は科学的には認められないとの
立場をとりました

去年12月
ワーキンググループの結論が提出されました

報告書は様々な疾患の増加を指摘する現場の医師の観察があるという
一文がそえられつつも
国際機関の合意として
疾患の増加は科学的に確認されていないと
結論づけられている

そのうえで
20mSvという基準は
健康リスクは低く
十分にリスクを回避できる水準だと
評価したのです

コロステン

ウクライナ
汚染地帯の街
コロステン

4月26日

チェルノブイリ原発事故がおきたこの日
事故で犠牲になった人を追悼する
街をあげての式典が開かれました

コロステン市長
人間は痛みを忘れがちです
しかし 忘れてはいけません
なぜなら チェルノブイリの教訓が
無に帰してしまうからです
フクシマの事故は
そのことを思い出させてくれました

式典に参加した地元の医師たちの中に
半世紀ちかく街の人々の健康を見守ってきたザイエツさんの姿がありました

医師
アレクセイ・ザイエツさん

事故直後
街の人々を守ることができなかったことを
今も悔やみ続けています

大学では低線量については
何も教えられませんでした
教えられたのは
500mSv以上が危険というものでした
事故直後はまだまだ
まだまだ余裕があると思っていました
なぜなら当時は
毎時10マイクロSvだったからです
だから何も注意をしなかったのです
私たちの失敗を
繰り返して欲しくはありません
いくら注意しても
しすぎるということはないのです

ウクライナの人にとって最も大切な日
復活祭です

甲状腺がんにならないか心配してきたエレーナさんも
教会を訪れました
事故以来毎年無事に過ごせることを祈ってきました
ウクライナの人々の祈りはいつまでも続きました

未来のための安全
と題された
ウクライナ政府報告書

被災地でおきる様々な病気と原発事故には関連があるという訴えは
国際機関にも
そして日本政府にも
いまだ受け入れられていません

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福島県、子供の甲状腺検査で36%に、異常を発見

放射線でDNAは破壊され、子孫に受け継がれていく。


福島県と長崎県の子供たちの甲状腺検査結果の比較(後編)|福島原発事故と放射能汚染
http://ameblo.jp/human1-cat1/entry-11260443604.html
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Category:福島第一原発事故

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